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それまで人気があった訳でも無いスポーツが盛り上がるには、たいてい幾つかの要素があります。例えば競馬はオッサンテイスト全開のギャンブルの場というイメージを明るく変え、若い女性層を取り込む事で飛躍しました。JRAという名称変更も上手かったですね。日本中央競馬協会のままではイメチェンは難しかったと思います。そこへ、シンボリルドルフだのオグリキャップだのとスター馬が登場したのも効きました。

F-1の場合なら日本人ドライヴァー中嶋悟の誕生、HONDA参戦、そしてセナを筆頭とするスター達の存在、とどめにフジテレビのプッシュですね。古舘さんのアナウンスがお嫌いな向きもありましょうが、あれが一時代を築いたのもまた事実です。

K-1なら正道会館、石井さんの立ち回りの上手さでしょうか。今や塀の中の住人ですが、フジテレビとTBS、日テレまでも巻き込む手腕は並大抵では行きません。その後の格闘技ブームの筋道はあの人が作ったようなものです。そこへ、アンディ・フグという日本人的なスターがタイミング良く出てきた訳です。佐竹の存在も何気に重要でしたね。

さて、ではバスケットボールの場合どうだったのかって話なんですが、残念ながら日本バスケット協会はあまり関係無かったように思います。たまたま、上手いタイミングで神風が二つ吹いただけですから。

神風その一は、意外にも週刊少年ジャンプから吹きました。バスケ漫画は成功しないという業界のセオリーに抗うべく、月刊少年マガジンの「DEAR BOYS」に続いて'90年に連載が始まったその漫画は、しかしぱっと見にはなんか赤髪ヤンキー漫画にしか見えなかった訳ですよ。私なんかも正直、第一印象はいまいちだったので、最初は読み飛ばしてたもんです。

団塊Jr世代ならよく分かると思いますが、当時のジャンプは「キン肉マン」「北斗の拳」「シティーハンター」etc、今思えば信じ難い層の厚さでした。掲載される漫画という漫画が次々アニメ化され、ゴールデンタイムのキー局で放送される様は正に他誌を圧倒していた、ジャンプ史上最強の時代。そんな中で、井上先生の絵はまだ今見るような完成度ではありませんでした。赤木キャプテン、初登場では頭の上にレンガ載ってましたからね。ハルコさんは連載開始から可愛かったですが。

私がやっと「スラムダンク」をちゃんと読み始めたのは対陵南の練習試合が終わった後、時間切れなのに桜木が「パアアス!」と叫ぶ会からですね。気まぐれにあれを読んでみて、恥ずかしながら私はようやく井上雄彦というヒトの才能に気付いた訳です。更に私の心を掴んだのは三井登場の回でしたね。あれ、またヤンキー漫画?と思ったらあんな展開ですからねえ。個人的には木暮先輩のうさぎTシャツがシリアスな場面に全くマッチしないあたりに、かなりツボった記憶があります。あのTシャツ、ユニクロとかで商品化して欲しいです(笑)。

そこからはもうひたすらハマるだけだったんですが、そこはまあ皆さんもたいてい同じでしょ?私、人生で「スラムダンク」が嫌いなヒトに会った記憶がありません。ただでさえ力量のある作家が、バスケットボールというスポーツを知り尽くしていた故に、これほどまでにバスケットボールの魅力を雄弁に語る作品を描き上げる事が出来たのです。結果、「スラムダンク」はバスケットボールというスポーツ自体のプロモーションに、最強の存在となり、部活のバスケ部員は増加しました。古くは「キャプテン翼」でサッカーに目覚めた世代がJリーグ設立やW杯進出の力となり、近年でも「ヒカルの碁」で小学生に囲碁ブームが来ましたが、全く同じ現象ですね。

かくして、恐らく日本という国で初めてバスケットボールというスポーツが盛り上がりを見せた絶妙なタイミングで、今度は世界レヴェルで第二の神風が吹きました。そう、バルセロナ五輪を席巻した'92年のドリームチームですね。'88年、ソウル五輪で金メダルを取り逃がした事からアメリカが本気を出してNBAのオールスターを注ぎ込んだという実は大人気無い流れではありました。このためにわざわざプロ選手の五輪出場を解禁した訳ですから・・・。ただでさえ商業化の波が押し寄せていたオリンピックに、これは決定的な一撃だったと言えます。

それもそのはずで、ここでNBAを率いる男、デヴィッド・スターンコミッショナーの出番な訳です。ドラッグなどで非常にイメージが悪かったNBAをJRA宜しく改革に邁進、マジック・ジョンソン&ラリー・バード、そしてマイケル・ジョーダンとタレントにも恵まれたスターンは'80年代にNBAを一気に立ち直らせ、商業的にも大成功を築き上げたのです。

しかし、スターンというヒトの凄さはアメリカ国内のマーケットだけでなく、既に世界中にNBAを売り込むという構想を持っていた事でした。そしてアメリカ国内の人気が最高潮を迎えつつあった'92年、しかもマジック・ジョンソンのエイズ事件で一層リーグが注目を引いていたタイミングで、スターンはバルセロナへNBAの最精鋭とさえ言える面々を送り込んだのです。そう、彼らはスターンが築き上げてきた業績の集大成であり、NBAというリーグを世界にアピールする代表団だった訳ですね。

その効果は絶大でした。対戦相手が試合前に記念撮影するわ、試合中までベンチのチームメイトにマッチアップの写真撮らせるわとファン揃いなのですから、観衆達はもっと大変です。スターンの狙い通り、全試合圧勝で完璧な金メダルを獲得したドリームチームはアメリカ代表の名誉を完全に取り戻すと同時にNBAを世界に売り込む事に成功しました。こうしてバスケットボールというスポーツの魅力に取りつかれた男達が、世界中からNBAを目指し、やがてアメリカ人選手をも脅かす存在へとなっていくのですね。

しかし、ここまで書いておいて何なんですが、実は私はドリームチームのショックは殆ど経験してません(笑)。我が家はオリンピックとか割とちゃんと見てたはずなんですが、今にして思えば当時の我が家、そして私は日本のメダル争いにしか興味を持っていなかったのでしょう。「♪乗客に日本人はいませんでした、いませんでした〜」と歌うイエローモンキーの名曲「JAM」じゃありませんが、私もまだまだナショナリズムの軛から脱する事が出来なかったんですね。

しかし、スターンの国際戦略はこんなものでは終わりませんでした。NBAを日本という大きなマーケットへ売り込むべくスターンは超一流商社、伊藤忠商事と組みます。彼らの画策したNBA売り込み策の数々が私の心を捉える日が、刻一刻と迫って来ていたのでありました。

(以下、「3〜NHK-BSと伊藤忠商事、そしてシャック〜」へ続く)

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