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(その5より続く)

いやー、前回の小林師範によるロックアウト論は如何でしたか。コメントの付き方がかなりスローペースだった事からしても、皆様ハードルが高かったのかなとやや申し訳無い気分であります(^_^;)うーん、経済学つってもかなり初歩の話ではあるんですよ。需要と供給なんで言うと難しそうですが、要はお米が豊作→売る量が多い→買う量は変わらない→米の価格が安くなる、とかそういう単純な話ですからね。要するに今は30チームもあるもんだからどこのチームもエースを求めてしまい、エースというよりは二番手ぐらいの選手にマックス契約が出たりするよね、って話ですな。・・・マジックフロントの悪口はそこまでだ(T_T)

私はここまで、ロックアウトを労働者と経営者による労働問題として見てきました。それに対して、師範はもっと高い視点、広い視野からロックアウト問題を提示してきた訳です。なんでしょうか、この美味しんぼにおける山岡士郎負けパターン。間違い無く山岡が「そうか、そうだったのか・・・!」とか先に呟き、海原雄山に「未熟者が!」とかどやされる構図です。いや、別に私と師範は確執のある親子でも何でもないんですけどね(^^ゞ

しかし、私は師範のロックアウト経済学論に対して全く異論が無いかと言うと、すこーしぐらいはあります。やっぱり「流石師範!かないませんな〜」みたいな感じでは進歩が無いじゃないですか。敢えてここで違う見解を提示してみるぐらいの気概を見せてみたいじゃない。まあヒトはそれを無謀と呼ぶのですが。こんにちは、ドンキホーテです。いや、24時間営業のお店じゃなくてセルバンテスの小説の方な。それに、私は同じ経済学でも「(神の)見えざる手」のアダム・スミスよりもケインズ推しですし。もっとも私の経済学の知識は大学の基礎教養で終わってますが(笑)。

それはさておき、じゃあ私が師範のロックアウト経済学のどのあたりに突っ込んでみたいかですが、1つはやはりNBAのグローバル化のあたりからですね。

今でこそ黒人選手達が席巻するメジャースポーツですが、それらは元来白人専用スポーツでした。マンガ「栄光なき天才たち」を見てもらえれば、黒人リーグとMLBのチームの対戦は前者が圧勝だったという描写があります。マーティン・ルーサー・キング牧師をはじめとする多くの黒人達の努力の末に、ようやく露骨な人種差別は減っていき、黒人アスリート達もメジャースポーツへと進出していったのです。NBAではビル・ラッセルあたりの時代ですね。ここからリーグのレヴェルは一気に口上したと言えるでしょう。ただ、このタイミングではNBAはまだアメリカ国内の選手同士でしのぎを削る国内リーグでしかなかったと思います。

その流れが変わり出したのはやはり'80年代でしょう。特にオラジュワン、ムトンボなどアフリカからの才能が集まるようになった意味は大きいと思います。ユーイングにしてもジャマイカ移民ですね。アメリカ国外からNBAを目指す動きは、ドリームチーム前から起こりつつありました。ドリームチームによるバスケ人気爆発がその流れを決定的にした、というのが恐らくは正しい見方なのでしょう。

'90年代にはペトロヴィッチやディヴァッツ、更にクルコッチと今度は東欧勢がリーグに現れます。ロシア伝説の巨人、サボニスまでもがNBAに参上し、アフリカからユーロへとNBA米国外勢力の構成はシフトしていきました。そして'00年代以降、今やドイツ、フランス、スペイン等ユーロ全域、更には南米や中国からもNBA選手が現れるようになっています。全世界のバスケ競技人口は増え、球技の中ではサッカーに次ぐポジションを築き上げたと言えるでしょう。それどころか、今やユーロの選手達は必ずしもNBAを必要としていません。フラン・ヴァスケスみたいにドラフト指名を受け、入団を望まれながらもNBA入りを自らの意思で断り、ユーロに留まり続ける選手さえ現れ始めています。NBAに来てみたものの短期間で引き返し、本国で活躍している選手なんてのも結構いますよね。

私はやはり、そんな今日の状況を考えてみた時、基本的にアメリカ本国だけでタレントを賄ってきた時代とは異なる市場が形成されていると見るべきだと思うんです。バード&マジックで盛り上がったNBA人気はジョーダン&ドリームチームで、世界で稼げるコンテンツへと進化しました。市場規模が拡大し、リーグの収入が増えたのなら、選手達にもその恩恵がより還元されるのはむしろ当然の事ではないでしょうか?個々の契約の成否は別としても、です。

さて、ここで話は師範の示したもう一つのテーゼへとリンクします。それは「NBAの真のスター選手は常に5人程度」です。これはスターの定義次第なので難しいですよね。NBAはリーグ創設50周年時に50人の選手を選んで称えていましたので、仮にこの基準を踏まえてみましょう。一人のキャリアを10年と仮定し、50人が毎年1人ずつデビューしていたとすると、最初の10年以外は10人のスーパースターが常にリーグに君臨していた計算になります。キャリアが長ければよりスターの人数は増えていくんですが、今回の師範基準はそれより2倍は厳しいと言えるでしょう。よって、10年のスパンで選べるのは5人までに絞る必要がありそうですね。

この感じで絞っていくと'60年代ならボブ・クージー、チェンバレン、ビル・ラッセル、エルジン・ベイラー、ジェリー・ウエストぐらいまで、'70年代ならオスカー・ロバートソン、カリーム・アブドゥル・ジャバー、ジュリアス・アーヴィング、ハヴリチェック、ビル・ウォルトンまで、'80年代ならマジック、バード、マクヘイル、モーゼス・マローン、アイザイアまでかな。'90年代はジョーダン、シャック、ヒル、オラジュワン、バークリー、'00年代はダンカン、コービー、アイヴァーソン、レブロン、ウェイド。・・・・いやー、なかなか厳しい基準ですねこれは。そりゃあカーメロが入れない訳です。ストックトン&マローンみたいな偉人達ですら突っ込む隙が無さそうに見えます。

おそらく師範の仰る真のスターというのは単にチームを牽引するだけでは駄目なんですね。リーグの看板となり、所属チームのみならずNBAというリーグそのものを一般層にまで認知させるような存在、こう考えれば師範の基準が厳しいのはむしろ当然です。上記メンバーに追加が難しい理由、お分かり頂けましたよね。

これに対して私自身は、実際にはバスケットボールの選手人口が徐々に増えているのですから、スーパースターの人数も徐々に増えているのでは?というスタンスです。実際ノヴィツキーやガソル兄弟、パーカー、ジノビリ等のアメリカ国外組エースも増える一方じゃないですか。ノヴィツキーあたりはそろそろ師範基準でもスーパースターに入れて良いかどうかというラインじゃないかと思いますし。彼らはアメリカ国内ではそれ程じゃないかも知れませんが、それぞれの母国でのNBA人気を支えているのは間違い無く彼らなんですし、そこは多少色を付けて評価してあげても良いんじゃないかなーと。

更に私はここに、もう一つ別の視点を持ち込みたいと思います。それは先日、Granmajohnsonさんとコメント欄で話していて思い至った事であります。いわゆるマックス契約というものについて、です。

マックス契約とは、ジュワン・ハワードやKGなどが天井知らずに契約金額を上げていく状況に音を上げたオーナー側が、選手達の契約金額の上限を定めた制度でした。即ち、師範仰るところの真のスターであっても規定の額以上を受け取る事は叶いません。

この結果、我々はマックス契約をトップクラスの選手の証と考え、ともすればその契約を獲得した選手に対してあれこれ言ってきました。レブロンと同じないしそれ以上の契約なのにルイス(仮)は何やってんだ、てな具合にです。

しかしながら、このロジックはマックス契約という制限が無い世界では話が変わってきます。マイケル・ジョーダンがブルズ最終年に獲得した年俸が3800万ドルだったので、仮にレブロンが同等の年俸を獲得したならばどうでしょうか。果たしてルイス(仮)やアリーナス(仮)が全く同じ金額を勝ち取れるかな?って話です。本来4000万ドル貰えるはずがマックス契約のために2000万ドルしか貰えない選手と、2000万ドルがいっぱいいっぱいで何とかマックス契約に乗っている選手とを、我々はマックス契約の存在が故に比較してしまってるんじゃないの?と思う訳ですよ。まあ2000万ドルでも不良債権やんけと言われそうですが、レブロンクラスが4000万ドル貰える世界では、2000万ドルは現行契約の世界では1000万ドルクラスの契約だと考えて下さいね。ほら、だいぶ感じ違いませんか?

そう言えばD誌最新号を読んでみると、コービーの真の価値は7000万ドルとレイカーズオーナーが言ってたとか、ウェイドがサラリーキャップの無い世界ならトップ選手の適正年俸は5000万ドル以上と言ってたとか書いてましたね。ほう、少なくとも真のスーパースター級の選手になら、4000万ドルとか払う事は可能という事ですか。

ただまあ、そうなったらそうなったでKGとウルヴスの悲劇が繰り返される気もするんですがね。スターに金使い過ぎて他の戦力が揃わず、結局スターも移籍、みたいな。まああれはウルヴスがケチだっただけかも知れませんが・・・。それに、やはりカネのあるビッグマーケットチームが好き放題スターを揃えまくる構図がより酷くなってそうですし。

ま、ifの話はこれぐらいにして、そろそろ現実に折り合いをつけるにはどうすれば良いのかを考えてみようと思います。どういう絵を書けば上手い事纏まるのかなーと。師範はハードキャップ&マックス契約の上限廃止により、真のスーパースターにもっとサラリーを還元するような体制の構築をお望みでしたが、私は多分マックス契約の廃止はオーナー側が絶対飲まないと思ってます。彼らは要するに契約の失敗が怖いので、単純に契約金額そのものを全体的にスケールダウンさせる事でリスクを減らすという作戦に出ているのです。自分達の経営上の失策を選手達に押し付けているようなものですね・・・。

また、師範方式だとスーパースターにだけ一層カネが集まり、選手間の収入格差は一層大きいものとなります。彼らスーパースター達にそれだけの価値があるのは事実ですが、他にもCM出演やら何やらで稼げる彼らをこれ以上経済的に優遇する必要あるかなーとも思うんですよ。私、あまり収入格差のグラフが急角度な世の中は好きじゃないんです。ウォール街が揉めてるのも、要するにそういう事でしょ?世の中、中流な暮らしのヒトが多い方がきっと幸せなんですよ。

つー事で、私ならこんな絵を描いてみますよ。

・マックス契約は(仕方無いので)続行
・タックスは超過額により課税を2倍、3倍に→サラリーキャップは一応ソフトで継続。但しサラリー合計の下限もアップ
・毎年アムネスティルールで1人のカットを可能とする。但しシーズンオフ間のみ
・ビッグマーケットチームからスモールマーケットチームへの利益還元をより進める


こんな感じでしょうか。真のスター選手達が本来得るべき収入は、申し訳ありませんが他の大多数の選手の為にリーグ外で稼いで頂く、と。あと、毎度言ってますがビッグマーケットチームの莫大な収入をもっとスモールマーケットチームへ渡し、ビッグマーケットチームの金満補強に歯止めをかける。タックスを厳しくするのも同じ効果を狙ってます。

また、クリッパーズみたいな利益重視のケチケチ経営を防ぐため、サラリーの下限をもっと上げます。これでどケチオーナーでもある程度は補強を行わないといけませんね。もしかしたら意外に勝てるチームになり、ケチケチオーナーも翻意してくれるかも知れません(笑)。それに、恐らくこれによって中堅どころの選手は収入が増えます。

で、大型契約のミスについてはもう防ごうにも防げないものと割り切り、むしろミスをフォローする手段として毎年アムネスティルールを行使可能とすれば良いのです。対象選手へのサラリー支払いは続きますから選手の損失にはならず、チームもキャップ計算から彼を外せるという訳ですね。但しシーズンオフの間のみ行使可とする事で、少なくともアムネスティルールでのシーズン中の移籍は無し、って訳で御座います。

えー、こんな感じで如何でしょうか、師範!?



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