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さて、何の気無しに書いてみた金満球団考察はなかなかフィーヴァーしました。最近ドワイト騒動関連記事で来訪者がガッと増えた後に些か落ち着きはじめていたところでしたし、今回はアクセス急増とかではありませんがコメント欄の伸び方は久々に来たな〜って感じでした。この手の記事はどうしても巨人が悪役になってしまう事は避けられませんので巨人ファンの皆様には申し訳無いなーとは思いましたが、ああ書かざるを得なかった状況をご理解頂けると深甚です。

そんな中、数少ない巨人ファンの方から、はとさんという方のコメントを頂きました。

「(前略)

巨人とその他の球団には絶対的な資金力の差があるのでしょうか。
また、1対11の状況になってなお巨人が好き放題する状況になってしまうのは何故なんでしょうか。ほかの球団は何故阻止できないのでしょう。
迷惑な顔は作っているようにも思えますが、本気で止めようとしているようには見えないんですよ(正直あまり詳しくはないのですが)。

1球団の政治的・資金的なパワーが、ほかの11球団の合計よりも上回るのでしょうか。
新聞社も傾き始める時代で、巨人戦の視聴率も取れなくなって久しいのにも関わらず、圧倒的なパワーでいられる理由はなんなんでしょう。なべつねのごり押しでしょうか。

(中略)

私は巨人に対して、郷愁にも似た愛着があるだけで、日本野球界には全然詳しくありません。
(後略)」


いやー、これは非常に良い前フリを頂いてしまいました。このはとさんのご質問にお答えする為には、巨人の今日に至るまでの戦後からの流れを追って行く必要がありますね。それはつまり讀賣グループ、そして戦後の日本を語る必要があるって事です。江戸幕末を語るのには関ヶ原の戦いから始める必要があるのと同じ事ですね。つー訳で、ちょっとリキ入れてかかりますんではとさん以下皆様、頑張ってついて来て下さいな。なお、イデオロギーな話は極力避けたいので右が左がとかって話はナシで参ります。

話は第二次世界大戦前に遡ります。読売新聞も巨人も、あの戦争前から存在しました。巨人の投手で沢村と言えば、長年沢村賞にその名を残す悲劇の名投手にしてMLBをも震撼させた巨人創成期のエース、沢村栄治を意味したのです。今、同じ名字の投手が巨人に在籍しているのは、その経緯はさておき感慨深いものがあります。巨人は何としても彼に沢村賞を取らせたいでしょうね。

それはともあれ、戦後の読売新聞は高校野球を押さえていた朝日・毎日新聞に対抗して東京巨人軍の経営に乗り出し、日本初のプロ野球球団として設立する事で新聞の販売宣伝に成功、地域限定の新聞から全国区へと進出していく事に成功しました。野球や芸能などを足掛かりに日本全国へと勢力を広げていくという手法は、未だに高校野球や箱根駅伝などでも頻繁に用いられていますね。これを日本で最初に始めた読売新聞は大したものです。

東京巨人軍は読売新聞の経営になって「読売ジャイアンツ」へと変わります。阪神タイガースも当初は「大阪タイガース」でした。日本では阪神が先鞭をつけたレトロユニフォームのシリーズで、「H+T」でも「T」でもなく、「O」の帽子を被っていたのを覚えているでしょうか。あれは阪神でなく、大阪タイガース時代の復刻ユニフォームだったからです。MLBのように地名+球団名にしようとした痕跡は戦前にはあったって訳ですよ。ま、現状はご存知の通りですが。

さて第二次世界大戦、太平洋戦争、呼び方は何でも良いですがとにかく日本はあの時戦争に負けました。沢村投手、高校野球唯一となる全試合完封(完全試合もあり)での優勝という大記録を誇る嶋投手などを戦火で失うなど、日本球界にも大きな損失を与えた敗戦だったのです。8月15日を今日では終戦記念日などと美化して呼びますが、あれは敗戦の日なんですよ。で、社会の授業で習うようにその後、日本はGHQによる統治を受けます。要するに植民地みたいなもんですね。その後GHQは去りましたが、まあ細かい事は抜きにすれば今でも日本はそんな感じの国です。形は独立国ですが、日本から見たかつての満州国と大して変わらないと私は思います。その良し悪し、功罪はここでは触れません。

で、話は読売新聞です。この会社を大きくしたのは巨人の存在が大きいと申し上げました。しかし、この新聞社にはもうひとつの顔がありました。読売新聞を戦後に一気に成長させたのが正力松太郎です。このヒトは元々東大卒業後は警察に入り、関東大震災時には朝鮮人についての情報を流布して問題になったという経歴を持ちます。その後警察を去り読売新聞を買収しました。一方で貴族院議員になったり、大政翼賛会にて要職を務めたりと政治の世界にもかなり関わっています。

で、戦後に彼は東京裁判でA級戦犯となり公職からも追放となりますが、不起訴で釈放されます。政界には戻れませんが経済界には戻れた訳ですね。で、釈放後に彼はCIAの協力者になりました。彼は自らの持つメディア、読売新聞、後に日本テレビの力を駆使してアメリカに協力する事を誓った訳ですね。そして実際に彼はアメリカと連携して日本での原子力発電所導入に注力します。政界で原発導入をリードした中曽根元総理大臣も今では日本での原発黎明期の話をよくテレビで話してますね。

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CIA云々は別にガセでも何でもなく、今日ではアメリカの公式文書で明らかになっており、日本でも普通に書籍やニュース番組などで事実として報じられている事です。戦後の読売新聞、日本テレビはそういう背景の元に世論誘導という重大なミッションを忠実にこなしてきましたし、今でもそうです。それは正力松太郎の政界への繋がり、影響力といったファクターをナベツネこと渡邉恒雄も忠実に引き継いでいるからです。

政治の話が長くなるのもアレなんで乱暴に纏めると、要するにナベツネさんは正力松太郎同様、読売新聞・日本テレビという強力なメディアを背景に政界との強力なコネクションを背景に絶大な権力を有しています。彼は正力松太郎の実に忠実な後継者なんです。メディアの世界でも、政治記者時代からその名を政治家に売り込んできた政界でも、そして日本球界でも。

巨人という戦前からの、しかも東京の人気球団。これを武器として読売新聞は部数を伸ばし、巨人の試合は高視聴率を叩き出す。そして他局でも人気のある巨人を取り上げていきます。テレビ局も先を争って巨人の試合ばかり優先して放送する事となり、かくて巨人の試合が毎日、日本全国でテレビ観戦出来る環境が完成しました。日本全国に巨人ファンが増え、更に巨人の人気が独走状態となり、セリーグ各チームは巨人との対戦による観客増を期待したのです。一方、パリーグは日本シリーズまで勝ち上がらない限りその恩恵に預かれる事は無かったのであります。セ・パ交流戦というアイデアは元々、パリーグも巨人や阪神のような人気球団との対戦による観客増の恩恵をパリーグにも、という思想で考えられたものです。巨人の神通力がかなり落ちてから実現したってのも皮肉なものですが。




実際、ここまで来ると巨人が経済に大きな影響をもたらします。日本中で顔の通る巨人の選手達は日本全国で流れるCMに出演しました。その他の球団?阪神の選手なら金鳥とサンガリアとクロコダイルとジョインオレンジジュースのCMに出てたぐらいじゃないですかね。日本ハムの選手は自社製品のCMにたまに出てましたが。




マンガの世界でも「巨人の星」「侍ジャイアンツ」「リトル巨人くん」・・・プロ野球マンガにおいて巨人を主役、ベイビーフェイスにするのが基本でした。言うまでもなく、その方が確実に人気が期待出来たからです。「アストロ球団」なんて例外もありましたかね。あ、「あぶさん」「がんばれタブチくん」があったかw



最早巨人は常勝軍団でなければなりませんでした。実際強かったからV9を達成した、それは確かです。しかし一方で巨人は読売グループの象徴であるのみならず、グループの経済的な成功の柱たる重責を背負ってもいました。「常勝巨人」はファンの願いである以前に、読売グループ全体が繁栄する為に欠かせない条件だったのです。

選手の入団に制限が無い時代であれば巨人にとってそれは難しい話ではありませんでした。そりゃあ誰だって在京の人気球団で、メディアや多くのファンに持て囃されて野球やる方が良いに決まってますからね。そう考えると南海ホークスで頑張ってたノムさんの反骨精神たるや凄い訳ですよ。ちょっとコンビニ行って「あぶさん」南海ホークス編でも読んでみて下さい、監督兼選手ですからねノムさん。関係無いけど落合前監督の奥さんが描かれているページは必見なので見逃さないように(笑)。

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そんな川上巨人のV9、「巨人、大鵬、卵焼き」時代も終わり、巨人の独走状態に歯止めがかかり始めます。きっかけは1965年、巨人のV9と共に始まったドラフト制度導入でした。その導入の効果が10年経ってようやく現れ、V9メンバーが高齢化した巨人はV10ならず敗れて川上監督は引退、長嶋茂雄選手はあの有名な引退宣言と共に監督へと転身するも、翌年はなんと最下位に沈みます。これは戦力の問題だけでなく、前年までチームメイトだった長嶋氏を監督と戴く事に選手達が抵抗があったとかどこかで読んだ記憶がありますね。

その後巨人が優勝出来なかった訳ではありません。ただ、V9のような圧倒的な支配はもう出来ませんでした。そりゃあ考えればその方が当たり前です、12球団もあるんですから。しかし前述のようにそれでは読売グループは困るんです。だから彼らはだんだん戦力確保に手段を選ばなくなってきました。それが資金力にモノを言わせての戦力補強と、あのなりふり構わないドラフトです。江川事件、桑田指名事件、裏金疑惑、数々の指名拒否事件、そして先に朝日新聞に掲載された契約金違反事件。現れた事象は違えど、裏にある本質は全部同じですね。巨人さえ強ければいい、というある種子供じみたルール違反、そして都度繰り返される見苦しい言い訳。

「巨人が優勝しないと日本の景気が良くならない」なんて発言に至ってはもう、思い上がりもいい加減にしろと言いたくなります。日本の経済じゃなく、読売グループの景気が良くならない、ってのが本音でしょうに・・・。他11球団は日本の景気の為に優勝するなと言うならば、こんなに酷いやらせは世界に類を見ませんね。

ところで、朝日新聞に載った契約金違反の記事についてナベツネ氏が反論した内容をご記憶でしょうか。彼はあの記事の情報を漏らしたのは先に巨人と決裂した清武氏に違いないと断じました。で、ひたすら彼の情報漏洩を訴え、法的措置を取ると息巻いたのです。

まず第一に、清武氏はこの件への関与を否定しています。推測だけで一方的に清武氏を犯人扱いするのは立派な名誉毀損です。ナベツネ氏の言動はサリンガス事件などで無実の人間を犯人扱いしたマスゴミの姿そのものの体現者ですね。

そして第二、こちらがより大事なんですがナベツネ氏は報道の内容そのものは否定していません。ひたすら清武氏をスケープゴートにして、自分達の行いそのものには頬かむりを続けるその姿にはデジャヴがあります。つい先日まで放送されていたドラマ「運命の人」のモデルとなった「西山事件」です。

西山事件とは、西山さんという記者が沖縄についての日米の密約をスクープしたのに対して、西山記者がそのスクープを入手する際に官僚の女性と大人の関係になって情報のリークを得た、という報道が流れた事件でした。メディアの報道はこの男女関係、その後の裁判沙汰にのみ集中しました。その間、西山記者が伝えた日米間の密約という遥かに重要なニュースは、恐らくは意図的にマスコミに無視され続けたのです。西山記者自身がその職を追われた事は言うまでもありません。

今回ナベツネ氏が契約金違反報道に対して反論している手法は、この西山事件でメディアが取った手法そのものです。そう言えばナベツネ氏はドラマ「運命の人」で自分達をモデルとしたキャラクターの登場にいたく不満でクレームを入れていました。ああ、あの時も今回も図星だったんですね、ナベツネさん。

(続く)




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