http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130719/k10013145751000.html
昨日、日本でもなかなか扱いの大きい経済ニュースがありました。自動車産業とモータウンビートで知られたアメリカ有数の都市、デトロイトが破産を申請してしまったのです。その負債額たるや、じつに1兆8千億円に上ります。これはアメリカの自治体としては最大の金額です。
日本との自動車販売合戦に敗れて以来デトロイトには厳しい状況が続いていたのは確かです。アメリカ最大の自動車会社だったGMは2009年には破綻しており、ある意味運命共同体みたいなところもあったんかいなと私なんかは思う訳です。最大180万人を数えた人口は既に70万人にまで減少していたそうで、既に公共サーヴィスの劣化と都心部の空洞化、というよりスラム化は深刻でした。
アメリカ事情に詳しい町山智浩さんはこう仰います。
デトロイト市破綻したけど米自動車産業がダメだからじゃないよ。フォードもクライスラーも別の市だ。デトロイト市内にはGM本社と野球場とカジノがあるだけであとは廃墟なので住民も税収もないだけだ。デトロイト市の外(北)には中産階級以上の豊かな住宅地が広がってるよ。
— 町山智浩 (@TomoMachi) July 19, 2013
なるほど、そういう解説ですか。更に町山さんは続けます。
自動車と関係なく、アメリカでは中産階級以上は郊外に移住するので都市中心部はスラム化、廃墟化する傾向があるんです。 RT @kishaburaku: @TomoMachi
— 町山智浩 (@TomoMachi) July 19, 2013
ふーむ、そういうもんなんですか。ただ、私はやはりGMの破綻が無ければそもそも人口減もこんなには無かったんでは、と思ってたら更にこんな御意見の方を発見。
デトロイトが衰退した理由は自動車製造のための「会社の町」になってしまったからだ、とジェイン・ジェイコブズは『都市の原理』で論じている。都市が自動車製造のために超-効率化されたため、都市の産業の「多様性」を失ってしまったことが最大の原因。効率化された都市は環境の変化に対応できない。
— 未発育都市 (@mihatsuikutoshi) July 19, 2013
おお、これまた勉強になります。自動車産業専用都市になったのが致命傷だったのですね。原発専用都市になってしまい、再稼動以外に希望が無い町みたいなもんでしょうか。そう言えばトヨタにしても元々織機会社からた自動車会社にシフトした訳ですし、ヤマハなんかはバイク、楽器、オーディオ機器等々幅広く手がけていますね。不況が伝えられる日本の家電メーカーの中でも生保・損保等に手を出しているソニーはそっちで本業のダメージをリカヴァー出来ているみたいですし、やはり一業種に固執するのは危険って事でしょうか。
デトロイトのYou Tube の映像、かなり衝撃的です。富裕層の住む郊外グロスポイントからデトロイト に入ったとたんに街並みが荒廃しているのがわかります。http://t.co/rARrFPFdb2 これが階層格差なのか・・・。日本でもこれが起きる可能性があるということです。
— 内田樹 (@levinassien) July 20, 2013
では、実際どんなもんなのか見てみましょう。この動画、問題は1:05から。どうやらここからデトロイトなんですよ。明らかにそこから町並みの雰囲気が激変するのが分かるはずです。ヒャッハーとか言いながら棘入りの肩パッド服を着たモヒカンが現れても驚かないレヴェル。いや、これは堅気のモンはよう住みませんわ。
http://gahalog.2chblog.jp/archives/52214623.html
この記事の写真を見れば、デトロイトがかつてどれだけの隆盛を誇る都市だったかは分かるはずです。これ、日本と戦争中の1942年の写真ですからね。それがどうしてこうなったのかは、こちらのTweetまとめが分かり易いのでお勧めです。さっき上でTweetを紹介した方ですね。
http://togetter.com/li/535937
デトロイトの今昔比較ではこの動画も分かり易いかも知れません。いや、ここまで栄えた街がこうも寂れるもんなんですね。
さて、ここまでデトロイトについて色々書いてきましたが、「これNBA関係あるん?」とお思いのあなた、関係大有りですよ。ひとつには言うまでも無くデトロイト・ピストンズの存在です。この破綻によって直接的にピストンズがどうこうはしませんが、常識的に考えて影響が無いと見做す方がどうかしています。
また、現デトロイト市長は元NBAレジェンド、デイブ・ビングです。ここを見に来ている方の9割は御存じ無い事と思いますが、主にピストンズでプレーし、新人王、得点王、オールスター3回選出などの結果を残して永久欠番、殿堂入りにもなっている偉大な小兵ガードでした。NBA引退後はビジネスマンとしての手腕を発揮、そしてかつて活躍したピストンズのお膝元デトロイトの市長にも'08年という、既に相当キッツい事になっている状況で敢えて立候補、当選した訳です(当選は'09年)。今回の破産の発表も忸怩たる思いがあった事でしょう。
そしてもう1人、ちょっと意外な方も絡んでいました。
ダン・ギルバートはQuickenの創始者だけど、私財10億ドル投じてデトロイトに土地買いまくり、市に次いで第二の土地保有者、、、か。彼はデトロイトの出身で、大学もミシガン州立卒だし、根っからのミッドウェスト・ボーイなんだね。
— TrinityNYC (@TrinityNYC) July 19, 2013
キャヴスのオーナー、ダン・ギルバートもそんな形でデトロイトに絡んでいたんですね。ホームタウンである上に大学も地元ミシガン州立大(マジック・ジョンソンの母校でもあります)では当然でしょうか。ただ、こうなるとギルバートも金銭的な被害はあるのかな?それがキャヴスのチーム経営に影響を与えないかは懸念されるところですね。
ま、このタイミングでこの話を取り上げた真意はやっぱりNBAというより、明日の参院選選挙ですけどね。
世界は「デトロイト化」趨勢のうちにあります。世界どこでも本質的な利益相反は「mobileな人々」と「immobileな人々」の間で起きています。「そこ以外に住む場所がない人たち」「そこでしか生きていけない人たち」が収奪され遺棄される対象となっている。
— 内田樹 (@levinassien) July 20, 2013
要するに、お金持ちで不自由無く引越し出来る人間が「mobileな人々」で、今の場所でしか住めない、生きていけない人間が「immobileな人々」です。で、我々の殆どが後者なのですね。今の政治はそれを更に推し進めるような方向へ向かっているように、私には思われます。
あなたが今住んでいる町がデトロイトみたいにならないようにするためにも、明日有権者の皆さんは是非選挙へ行って、有権者の意思を示して欲しいと思います。ここで私はどの政党・候補を推すといった事はしませんが、まず選挙に行かないと何も始まりませんからね。行った事無いあなたも今回は是非、試しに行ってみて下さいな。小学生の時好きだったあの子に偶然再会して、「私・・・ずっと好きだったの・・・(///)」とかあるかも知れないじゃないw
冗談はさておき、せーんきょせんきょ、あかるいせんきょーって感じで明日は行ってらっしゃいませ〜。
8 Mile [Blu-ray]
出演:エミネム
ジェネオン・ユニバーサル(2012-04-13)
販売元:Amazon.co.jp
8 Mile [DVD]
出演:エミネム
ジェネオン ユニバーサル エンターテ(2012-04-12)
販売元:Amazon.co.jp
自分も特に推す政党や人がいるわけではないですけど、何もせずに文句だけ言うようにはなりたくないので。