ラプターズ123-120ニックス(2TO)
キャヴス104-93シクサーズ
ブルズ105-84バックス
ロケッツ100-95マヴス


NBAどのチームにとっても、およそ「どうでもいいシーズン」なんてのはありません。ずっとドアマットの底深く轟沈しているようなチームだって、ドラフトという未来の希望があります(トレードで指名権出してしまったチームはアレですが・・・)。それに選手達だってそれぞれ、来季以降を考えれば普通は手など抜いている場合じゃないんです。プレーオフ進出の可能性が既に潰えようとも、モチヴェーションをある程度維持して戦えるのはそういう訳ですよ。流石にシーズン最終戦あたりで休んでる主力選手は別ですが、NBA生き残りがかかる選手達を代わりにコートに出せば必死にプレーするはずです。毎シーズンの積み重ねが大事だなんて当ったり前の話なんですよね。

が、やはりそんな中でも今季こそが勝負のチームってのはあります。それも揃いも揃ってスモールマーケットの雄たるマックス契約2本持ちチームに今回はターニングポイントが迫っているなと思うんです。今回はそんな分岐点到来、セーヴポイントはよ!な2チームをピックアップです。

☆ペイサーズ

カンファレンスファイナル進出、覇者ヒートとの7戦まで続いた死闘、そしてポール・ジョージの台頭。チーム低迷期を乗り越え、遂にペイサーズはここまで戻って来ました。レジー・ミラー時代以来となるタイトルコンテンダーの位置に、です。

そしてベンチ層の薄さを指摘されてきたペイサーズはこのオフ、かなり本気出した補強を行いました。デヴィッド・ウエストを無事引き止め、ポール・ジョージとは目出度く契約延長。更にスコラ、そしてコープランドを加えました。ウエストやヒバートが引っ込んだらスコラが出て来るフロントコートとか、相手からしたら相当嫌な感じですよね。しかも元エース、グレンジャーがいよいよ復帰して更に戦力アップ・・・打倒ヒート、そしてチーム初優勝へ嫌が応にも期待は高まろうというものです。

しかし、実はペイサーズにとって、決して優勝への道はじっくり悠長に構えていられるものでもありません。それはスモールマーケットの悲しさ、サラリーキャップの問題です。何しろペイサーズはポール・ジョージとマックス契約を交わしたのです。いえ、それが間違いだとは言いません。昨季の好調を維持し続ければ、という保留条件は勿論付きますが、彼がマックス契約に相応しいペイサーズの新たな柱である事は自明ですからね。

しかし、です。ペイサーズはこれでヒバートとジョージ、2人のマックス契約を抱える事になってしまいました。どちらも他球団に掻っ攫われる可能性があった以上やむを得なかった事ではあるものの、やはりこのマックス契約のマルチヒット状態はペイサーズの財政に響きます。更にデヴィッド・ウエスト、ジョージ・ヒルあたりも合計2000万ドルぐらいはかかってますね。そしてダニー・グレンジャーだって契約最終年ながら1400万ドルとマックス級の金額であります。

これらの結果、来オフに再契約困難な選手が2人いるのです。即ち、そのグレンジャー、そして昨季ブレイクを果たしたランス・スティーヴンソンになります。グレンジャーはこれだけ故障を重ねている状態なのでディスカウントは避けられませんが、そうは言っても近年のペイサーズを支えてきた男に大幅減額は難しいでしょう。それに、その減額分でじゃあランスを引き止められるか?というと難しいです。何しろ2巡目指名だったランスのサラリーは100万ドル程度だったんですから、再契約となれば一気に金額上昇は避けられません。

忘れないで頂きたいのは、ペイサーズがほんの少し前までチーム財政が厳しく、一時は球団身売り説まで流れていた事です。ヒートやマヴス、マジックみたいにオーナーが大枚叩いて誰でも彼でも再契約出来る訳じゃないんですよ。つまり、ペイサーズが昨季快進撃を見せた体制で戦えるのは、今季が早くもラストチャンスかも知れないんです。

ペイサーズが取るべき選択肢は3つ。

1.グレンジャー大減額で再契約&ランス金額アップ再契約
2.グレンジャー放出&ランス再契約
3.双方放出


1はグレンジャーが凄まじいディスカウントを飲まない限りはかなり難しいと思われますが、今でも先発が張れると信じるプライドの高い彼がそれを飲むか、って話です。可能性は相当低いと見て良いでしょう。

2・3の放出とは、トレード・来オフの放出の両方の可能性があります。タイミングがバラバラな可能性もありますね。トレードであれば再契約を諦めて、より安くて複数年契約を持った選手が対象となるでしょう。サラリーキャップを空けたいチームとなら破格の条件でのトレードも可能かも知れません。

このチームのままで機能し続けるなら、オフに無償で彼らを失うリスクも承知でシーズンを戦い抜くという選択肢も有り得ます。この場合、勝利こそが再契約への最大のアピールポイントになるでしょうね。

恐らく一番可能性が高いのは2だと思いますが、どうなるかは蓋を開けてみないとわかりません。何にせよ、ペイサーズの今季はモノスゴク大事だという事だけは間違い無いですね。勝って欲しいなあ、ペイサーズ。

※ここまで、ニコ生放送主オデンさんのご意見を大いに参考にしました。

☆サンダー

そんなペイサーズが今直面している選択を昨年のオフに迫られたのがサンダーでした。デュラントとウエストブルック、2人のマックス契約でチームの核を固めたサンダーでしたが、ハーデンとイバカの2人の再契約が同時に迫って来たのです。攻守にファイナル進出を支えた2人の2択という難題に対し、サンダーが出した答えがイバカ再契約、ハーデンのトレード放出だった訳です。

ウエストブルックの故障の結果、サンダーはオフェンスでデュラントの孤立化を招き、カンファレンスセミファイナルでの早過ぎる敗退となってしまいました。あの結果を以てハーデンを選ばなかったのは失敗だった、と言うのは簡単ですが、イバカの力あればこそ勝ててきたのも事実な訳で、そういう短絡的な結論はいかんなあと思う訳です。私もそんな事書いてた気がするのですが(−_−;)

サンダーの懸念材料は2つあります。ひとつはやはりウエストブルックの健康です。一旦手術に踏み切って、後は復活を待つばかりと思いきや再手術のため開幕4〜6週間アウトというニュースには流石に心配にもなりました。早くも練習に参加したという話もありますが、ウエストブルックのコンディションは勿論のこと、この手術→再手術というプロセスでウエストブルックがチームのメディカル担当への不信感を抱いていないかは気にかかるところですね。

もう1つの懸念材料、それはデュラントです。いえ、彼の成績は心配していません。彼がいるだけでチームは50勝コースだとは思います。問題は、昨プレーオフでウエストブルック離脱後に露呈したオフェンスでの2トップ以外のオプションの少なさ、弱さです。誰にも頼れないデュラントの姿にキャヴス時代のレブロンを重ねる向きは少なくなかった事でしょう。

そして、個人的にずっと引っ掛かっているのがデュラントがエージェントを変えた事。ドワイトがエージェントを変えてからおかしくなり、マジックからの移籍を考えるようになった事を忘れてはいけません。デュラント、君にはオクラホマは狭過ぎる。ロサンゼルスはどうだい?なんて甘言を毎日聞かされていたらどうするのって話です。

私が一番懸念しているのは、デュラントとハーデンが今でも相当仲良しな事です。移籍した仲間と今でも友達だなんて結構ですなあと今まではのん気に考えていましたが、もしデュラントがドワイトみたいに移籍を望み、チームにトレードを要求したら?ロケッツは実はデュラントにはなかなか格好のチームです。親友ハーデンがいますし、実はドワイトは以前にリーグの誰かと自由に組むならデュラント、なんて事を言っていました。オフェンスのデュラント、ディフェンスのドワイト。あれ、これ割れ鍋に綴じ蓋じゃね?

ロケッツ云々はあくまでifでしかありませんが、皆さんもうお分かりのように、ドラフト指名したスター選手って1度目の契約延長時はだいたい再契約するんですよ。で、2度目の再契約、またはそれまでに移籍騒動を巻き起こすんです。レブロン、カーメロ、クリス・ポール、ドワイト、皆そうだったでしょ?

また、一度ファイナル進出を果たしながらその後チームが伸び悩むというのも危険なサインです。キャヴスでのレブロン、マジックでのドワイトはそうでした。そして同じくファイナル進出翌年に、相方ウエストブルックの故障があったとはいえあんなに早期敗退を余儀無くされたデュラントも今、そういう危険な昼下がりの団地妻みたいな時期に差し掛かっているんですよ。どうですか、危機感持って頂けましたか?

デュラントがドワイトよろしく昼ドラの主人公みたいな事にならないためにも、サンダーは今勝つしかありません。キャヴスやマジックが陥ったような、あのチームの中心人物が移籍するかも知れないままシーズンを送るような羽目にならないためにも、です。ウエストブルックの完全復活がまずは待たれます。

また、サンダー=ドラフト巧者ってイメージがあり、実際イバカぐらいまでは完璧なんですが、ここ最近はペリー・ジョーンズ三世、ハーデンとのトレードでやって来たジェレミー・ラムとまだ芽が出ていません。今年ドラフトしたスティーヴン・アダムス含めた若手トリオが戦力として伸びて来るか、ここがサンダーの今後の鍵となる事でしょうね。

ペイサーズとサンダー、共に近年のスモールマーケットチームでは成功しているチームだけに、どちらもここで躓いて欲しくありません。ヒートという難敵を倒すというハードルの極めて高いミッションを彼らが果たしてクリア出来るか、そして今の強さをキープ出来るか。何とかそれぞれが抱える難題をクリアして、末長く強豪として君臨して欲しいものであります。マジックも同じ道を目指しているだけに、です。



HEAVENHEAVEN
アーティスト:MULTI MAX
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