いやー、終わりましたねえ。思ったより早くてビックリしました。思えば連載開始当時から気にしてたんだよね、バスケ漫画だし。なんでこんな早く終わったんや『フープメン』!・・・ってボケもそろそろ打ち止めでしょうか。遂に時をほぼ同じくして始まったもうひとつのバスケ漫画が、今週連載を終えました。はい、エントリータイトルにしといてボケても仕方ありませんね。

正直、作者の藤巻先生はこのタイミング、即ちウィンターカップまでで連載を終える可能性を以前から示唆してはいました。とはいえ、昨今の人気マンガは連載を引き伸ばしてナンボ。連載100巻を越えてなお世界チャンピオンに挑戦もしていなかったり、まだ連載中盤と作者が豪語したりと、今からゴルゴやら両さんやらの連載記録越える気なんじゃないかとしか思えないようなマンガが両手の指で数え切れない程に溢れているのが現状です。今やジャンプの看板連載のひとつとなっていた『黒子』がまさかこんなに早く連載を終えるとは正直予想外でしたね。

例の脅迫事件の影響?それは少なからずあったかも知れません。芸能人ならともかく、マンガ家が脅迫されたなんて事、そうそうありませんからね。近年ではオウム真理教に襲撃された(?)小林よしのりぐらいでしょうか。作者が直接狙われた訳じゃありませんし、どちらかと言えば黒子関連の脅迫事件は運動会やら何やらに爆弾を仕掛けた系の事件と通底するものがありますが、とはいえやはり藤巻先生も心を痛めていた事と推察します。ストーリー展開には影響無かったと思いたいですが。あ、あの犯人については黒子ファンには許し難いものがあると思いますが、彼は彼で色々抱えていたので是非こちらなどをご一読下さい。

ジャンプ側が連載終了を呑んだのは分かります。今のジャンプはご存知の通り、女性人気が大きなウェイトを占めていますね。何か『テニスの王子様』『黒子』のせいでそうなったみたいな誤解があるような気がしますが、少なくとも『幽遊白書』『スラムダンク』あたりの時点でそんなカルチャーは既に確立されていました。「腐女子」なる言葉はまだ存在しなかったものの、「やおい」という言葉は既にあったんです。そして、男性キャラクター同士で愛し合う、いわゆる薄い本だってありました。今更その文化を否定しても仕方ありません。何しろ江戸時代からこの文化は・・・ああ、それはcomicoに載ってるマンガの話でしたw

ともあれ、『黒子』が終わっても今のジャンプにはちゃんと後釜があります。そう、『ハイキュー!!』ですよね。『黒子』と同じくスポーツモノ、しかもアニメ化で更なるメジャー化というプロセスまで完璧に同じなバレーボールマンガは、しかし決して二番煎じではなく純粋に面白いです。腐女子人気を獲得しながら敢えて女性キャラを追加投入するあたりもなかなかニクいじゃないですか。『テニスの王子様』『黒子』とは違いあからさまに極端な必殺技ではなく、割と正統派な強さを見せようとしているところも良いですね。

他にも『暗殺教室』『食戟のソーマ』『ワールドトリガー』となかなかアニメ化が楽しみな作品が並ぶ今のジャンプだからこそ、編集サイドも『黒子』連載終了を呑んだんだろうと思うんですよね。あんな脅迫事件があった後では尚更でしょう。しかし、恐らくは藤巻先生自身も、これ以上ストーリーを引っ張っても厳しい、という思いもあっただろうと推察しています。

そもそも『黒子』の人気を最初に確立したのは、緑間慎太郎の登場でした。自軍ゴール付近からコート反対側の敵ゴールを狙って決められるという衝撃の必殺技が炸裂した時、この作品もまたその地位を確かなものとした事は疑いありません。しかし、一方でNBAクラスをも遥かに凌駕するシューターを出してしまった事で、作品内の能力インフレが始まってしまいました。何しろこの能力を持った選手に勝たせなければならなかったのですから、藤巻先生の苦労はハンパではなかったはずです。

しかし、もっと難しかったのは緑間以外に「キセキの世代」は4人いたという事実。彼らの能力も緑間同様かそれ以上でなければならなかったんですよ。時系列で言えば既に黄瀬くんも登場してましたが、彼らの能力を改めて纏めましょう。

黄瀬→他選手のプレーをコピー(後にキセキの世代もコピー可能に)
緑間→コート上どこからでもシュートが入る
青峰→どんな無茶苦茶な体勢からでもシュートを沈める、いつでもゾーンに入れる
紫原→3ポイントライン内全て守備範囲、インサイド無双
赤司→相手のプレーを読む、相手をこちらの思うようにプレーさせるよう仕向ける、完璧なパス、1人で無双、チーム全員をゾーンに


ラスボス赤司の能力を考えるのが多分一番難しかったんじゃないかと思うんですよね。特に最初はおいおいこれでラスボス行けるんかいとかなり不安になったものでしたが、最後はまさかのチーム全員ゾーン突入という、しかし実にPGに相応しい能力を炸裂させてくれました。私は藤巻先生、よくこの能力を考えついたなあと素直に頭が下がりましたね。

で、またこんな連中を倒す能力を黒子と火神に考えてやらなければならなかった訳で、そりゃまあ能力のインフレ化は避けられなかった訳ですよ。藤巻先生としてはこのウィンターカップまでで正直やり切った感はあるだろうなと思うんです。むしろその先を考えない、短距離レース感覚だったからこそこれだけ濃い展開が出来たんじゃないかと思うんですよね。黒子達の誠凛高校が青峰達の桐皇学園高校に勝った時使った大技「ミスディレクション・オーバーフロー」が作中、同じ相手には二度と使えない、それでも勝ちたいんだ、先の事はその時に考えるというような描写とセリフがありましたが、あれは藤巻先生の心中そのままだったんじゃないかと私は思いますね。

世界選手権、黒子達が2年になってからの新たな展開もやろうと思えば可能だったはずです。実際、黒子達が1年入学から話が始まっていたのですから卒業まで話を続ければ結構な長期連載になったはずでして、敢えてそうしなかったのは特に能力インフレ感がマックスになりつつあったからでしょう。戦闘能力の数値が上がるだけとかではスポーツマンガは成り立ちませんからね。ただ相手をぶっとばすだけではスポーツマンガでは勝てない・・・事もないですけどね、紫原くん見てると(汗)。

ただまあ、やはりこれ以上続けても、ウィンターカップ決勝戦のピーク感を超える事は難しいと思うんですよね。であれば、ここで終わるのが有終の美という考え方は妥当じゃないでしょうか。恐らくは12月のジャンプNEXTで特別編が1回載って、それで連載完結ではないかと予想します。

さて、このエントリーの最後に触れたいのはいわゆる、『スラムダンク』パクり説についてです。2chまとめスレあたりで再三拡散されているように、『黒子』には『スラムダンク』と似た描写がいくつも登場します。試合終了後にロッカールームで居眠りしてしまう主力達(翔陽高校戦と桐皇学園高校戦)、試合後に怪我の痛みがぶり返す(赤木と黄瀬)、4ファウルに焦って抗議するキャプテン(魚住と日向)等々、検索すれば色々出て来るでしょうね。

しかし、そもそも『スラムダンク』を読み込んでいたと公言している作者、しかも掲載誌は同じ週刊少年ジャンプ。パクりであれば誰だってすぐ分かる訳でして、そんなアホな作者がいるかいなって話です。これらの描写の類似は基本的には意図的なものだと考えるのが妥当でしょうね。

それが一番顕著になったのが連載回数。『スラムダンク』276話に対して『黒子』275話で終了という、明らかに『スラムダンク』に対するリスペクトを込めた連載終了は完全に狙ったものでしょう。それであれだけ綺麗に話を終われるなら大したものですね。え、あと1回特別編があるかも?『スラムダンク』なんか黒板に描いた特別編があったじゃないですか。

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作者自身がいみじくも語っているように、『黒子』は『スラムダンク』でやらなかった事をやろうとしたんだと思うんですよ。ポイントを整理してみると、

・強敵に一度惨敗したところから立て直す
・伏線完全回収(出て来たライヴァル全倒し)
・全国制覇


『スラムダンク』が実は山王工業戦で惨敗する予定だったが、ジャンプ編集部の反対で勝つ事になったというのは当時噂されていた話でした。今となっては作者の井上先生を含めそれを肯定する人間はまずいないでしょうが、少なくともあの結果、愛知の星こと愛和学園の諸星大(今思えば名前の元ネタは諸星大二郎ですね)との対戦は文字説明のみとなり、名朋工業のシャックまんまな森重寛は花道とぶつかった伏線は生かされず、さわやかイケメンエースっぽかった大栄学園の土屋淳は会場でビックリするだけの仕事になってしまいました。多分あの後で全国優勝したのは大栄学園なんだろうな、という気だけはしますが、まあ予定通り(?)山王工業が勝ってたらそのまま連覇を伸ばしていたんでしょうけどね。

そういう伏線の回収漏れが、『黒子』にはありません。出て来た相手で直接誠凛高校と対戦してないのは灰崎祥吾の福田総合高校ぐらいでしょう。しかも、一度青峰&桃井の桐皇学園高校に惨敗→リヴェンジという流れは正に『スラムダンク』で山王工業相手に出来なかった流れです。いや、仙道&陵南高校にはリヴェンジ決めてますけどね。そして全国制覇・・・まああそこまで盛り上げたらそうなりますわな。

つー訳で、『黒子』が単なる『スラムダンク』のパクリだという認識はちょっと安直過ぎるんじゃないかと思いますよ。恐らく『黒子』は最初から『スラムダンク』を念頭に置き、意識的にその描写や構図を取り入れていったのだろうと思います。「リスペクト」というのはこういう文脈で使うべき言葉なんでしょうね。

因みに、私は『黒子』はあと1つのバスケマンガにも恐らくはリスペクトを込めています。黒子達の高校は誠凛高校、ですよね。せいりん高校・・・おっさんには聞き覚えのある名前です。

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SEIRIN・・・そうなんです、元祖バスケ漫画のひとつ『ダッシュ勝平』の主人公が在学しているのが星林高校、なんですよ。漢字は違いますが読みは全く同じというこの事実、私は偶然ではないのではないかと見ています。いや、『ダッシュ勝平』ってバスケ漫画よりH要素全開な学園ものでしかなくね?と言われたら否定出来ませんが・・・ほ、ほら『黒子』もリコ監督vs桃井のお色気対決があったから(震え声)。

ともあれ、『黒子』連載はひとまず幕です。将来連載再開可能な伏線(木吉の怪我回復の可能性、新入生登場のフリなど)は振っているので将来『新・黒子』といった形で連載再開の可能性もありますが、とりあえず12月まではアニメ第3期以外は大きな動きは無いでしょう。藤巻先生もお疲れ様でした。まずはゆっくりお休みしつつ、次作の構想をじっくり練って頂ければと思います。

P.S.

ところでウィンターカップ決勝前に、日向キャプテンがリコに告るっぽい伏線ありませんでしたっけ?12月のジャンプNEXTに載るだろう特別回で伏線回収はよ!



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