ワイはこんなエントリーで復活しとうはなかった!

いやほんと、何年振りかのブログ再々稼働がこのネタになるのも嫌だし、そもそももうあの事件から4ヶ月も経って世間様の記憶もすっかりその他のしょうもない出来事にアップデートされた昨今、今更あの話を蒸し返すのも良くないよなと私も珍しく空気を読んでいたわけですよ。当事者の選手達をいつまでも追い詰めるようなのもいかんなあとか。しかし、どうやらそれは間違いだったんだなと思い知らされました。うん、やっぱり空気なんか読むんじゃなかったようですね。では、あまり思い出したくありませんでしたがまず改めてあの事件の内容をおさらいするところから始めるとしましょうか。


とはいえ事件の元々の概要は今更おさらいせずとも皆さんだいたいご記憶の通りでしょう。ジャカルタで日本代表の公式ウェアを着た4人のアジア大会代表選手が買春した、それが事実でしたね。


日本オリンピック委員会(JOC)の対応は迅速でした。4人をすぐさま日本へ帰国させ、アジア大会は残り8人で継続参戦。


日本バスケットボール協会(JBA)は4人の公式試合出場権を1年剥奪。つまりは1年の謹慎ですね。


当時の選手たちの一問一答はたとえばこちらで読めます。


かくして選手たちは大幅なサラリー減俸、社会福祉活動などに従事して1年を過ごすことになりました。


新潟アルビレックスBBの今村桂太選手の場合、チーム独自の処分として無期限の社会奉仕活動という処分が科されました。かくて各選手は所属チームは違えど概ね同じような形のペナルティーを抱えて1年を待つ形となった、はずでした。


ところがその新潟アルビレックスBBから、先日上記の発表がありました。その今村選手の早期復帰を願う「署名活動」をチーム主導で開始したというのです。公式ツイートでこの件は広まりましたが、添付写真に個人情報(おそらくは個人名)が載っていたためか現在はそのツイートだけは削除済みです。

新潟アルビレックスBB側の発表を信じるなら、Bリーグ大河チェアマンが会場のブースターの皆様に向けて「どんどん僕の方に声を届けてください!」と発言。新潟アルビレックスBB側はその発言を受けてこの署名活動を始めたと読めます。

私はこの件を知って、本件についてやはりきちんと総括しなければいかんな、と痛感したのです。コート外の不祥事だし、いつまでも騒ぐのは選手達を追い詰めるだけだからもうやめよう、そう思って閉ざした口を今開いたのはアルビレックス新潟BB側の姿勢が原動力です。本来NBAブログたるこの場所でそれをやるのは筋違いとお思いでしょうが、当ブログも見当外れ気味ながら日本バスケの状況を憂いていたものでした。

本件について話せない立場の方々も多くいらっしゃることでしょう。それは仕方無いところがあります。メディア関係者、特にバスケ関連の方々には取材上の事情もあるでしょうし。ですが、私はただのNBAクラスタでしかありません。各種バスケ媒体にも特に呼ばれていないFA状態です。ですので、本件についてこのブログを再起動し、自由に考察させて頂く次第です。というわけで、色々順を追って纏めて参りましょう。

1.選手たちの何がいけなかったのか
→性風俗に行ったことプラス「公務中」だったこと

原点に立ち返るにあたり最初に申し上げますが、私はいわゆる性風俗の善悪について議論するつもりはありません。私自身は性風俗に全く興味は持てませんがそこに行きたい男性の気持ちは理解しますし、そこで働く女性含めて否定はしません。女性については人権がちゃんと保証されているかは非常に危惧してはいますが。

本件の話で「風俗行くぐらいで厳し過ぎないか」という意見はいくつか拝見しました。ええ、単に風俗行くだけなら行っている選手なんて他にもいるでしょう。B1からB3まで数多の選手がいるんです、その全員が聖人君子とは思えません。そういうところへ行かれている方もいらっしゃるかと存じます。でも、そうだとしても今回の件を大目に見る材料には成り得ないのです。

彼らが今回処分を受けたのは女性を買ったからだけではありません。日本代表として赴いた先で(しかも日本代表のウェアを着て)女性を買ったから一層厳しい処分を受けたのです。女性を買ったこと自体のみならず買った状況に更に問題がある以上、性風俗の善悪を言うことはあまり意味を成しません。あるかないかで言えばありますが、そこを議論しても無意味です。百歩譲って性風俗を肯定したとしても、本件について処罰を緩める理由になるとは私は思わないです。


つい最近も公務で台湾へ赴いた山口県美祢市市長がホテルに女性を連れ込んだと騒動になっています。公務で行った先でやらかしたから大きな問題になっている例です。

もちろん、性風俗に行ったこと自体をプロ選手として問われる局面もあります。子供になんて説明するんだ、というのはまさにその通りで、プロ選手たるもの、ある程度ロールモデルである必要はあるでしょう。そこで「風俗ぐらい・・・」は残念ながら反論にはなりませんよ、って話でした。

2.処分内容は適切か
→本当は怪しいけど一応妥当なラインかと考えます

一連の処分が軽過ぎたか重過ぎたかは人によって全く意見が割れます。1年なんて長くない?という人もいれば永久追放だ!という人もいる。それはまあそういうもんでしょうね。もちろんこれが性暴力の類であったなら一発アウト、永久追放に異論はありません。で、今回のケースについて適正値を考えた時、まだ未来のある若者達に永久追放は重過ぎるかなと感じました。

今回の場合、一緒にその場にいたばかりに付き合って行かざるを得なかった選手がいる可能性もありますし、過ちとしては方向性的にかなりキツいですが相応の償いなり贖罪なりがあれば復帰を認めるというラインが妥当ではあったと思いました。もちろん、1年が終わったから完全に許されるとは限りません。心無いヤジを飛ばされることもきっとあるでしょう。本当はもっと重罪だっだ可能性もある状況ですが、私はとりあえず処分の内容自体には納得しています。

また、一連の処分のスピード感については言及しておくべきでしょう。JOC・JBAそれぞれの対応は事件発覚から非常に迅速なものでした。アメフト、ボクシング、体操、相撲等々プロアマ問わずスポーツ界の不祥事発覚が相次いだ2018年において、本件のインパクトが薄れつつある理由はこのスピード解決故に他なりません。言を左右して世間の反応を伺ってから処分を決めるのではなく、選手達に頭を下げさせるあの記者会見でバシッと終わらせたからこそ、後々まで報道がズルズルと続くこともなかったわけです。一般論としてメディアがいつまでも同じ話題に固執しているように見えるとしたら、それはそのメディアが偏執的に取材対象を追及しているケースと、取材対象がまともに応じないで誤魔化しに入っているケースがあります。スポーツ界においては直接利害が絡むとか変な圧力がかかるとかでない限りは前者の可能性は低いでしょう。であれば、適切と思われる処分をさっと下すのが正解なのです。

JBA会長が女性かつ畑違い(バレーボール)出身の三屋裕子さんだったことは非常にプラスになったことでしょう。男性会長なら「元気があって結構ではないかね」などと悠長な事を言っている間に炎上していたリスクがありましたし、バスケ界隈の人なら色んな方面に気を遣おうとしてやはり対応が遅れたかも知れない。女性の三屋会長だからこそ事件の内容を大目に見ることはなかったし、しがらみもないからバッサリやれたわけです。バスケ業界みんな会長に感謝しなきゃいけないのに、「選手達を晒し者にして」とかいう的外れな批判してる人達はなんですか、そんなに事件を炎上させたかったんですか。火事は初期消火が一番大事だって習いませんでしたか?

また、さっさと現地を離れた意味も重要でして、あれは実は現地インドネシアでは売春が違法だったという側面があります。特に女性たちが18才以下なら重罪あのまま現地でフラフラしていたら逮捕→女性の年齢発覚で長期拘束の可能性もありました。実際、「罪も償わずに日本へ逃げ帰るのか」という厳しい意見も見られたぐらいです。実際、今や買春行為については有耶無耶になってしまいましたね。

https://news.yahoo.co.jp/byline/maedatsunehiko/20180901-00094376/

本件の刑事的側面についてはこちらが参考になるかと思います。私なんかより遥かに厳しい見方をされているのがお分かり頂けるでしょう。

蛇足で更に申し上げるなら「かつて太平洋戦争期に占領していた地域で日本人が女性を買う」という行為についても、歴史を知る人間であれば考えておいた方がいいでしょうね。このあたりについては扇情的なネット記事や雑誌、自称「真の日本史」の類ではなく、まともな学者による研究に目を通しておくことをお勧めしておきます。 


3.朝日新聞が悪い?
→寝言は寝て言え

こんな話で1章使わなければいけない世の中になったのが本当に情けないですねぇ・・・ 私は川淵キャプテンという人を尊敬しています。あのナベツネと戦って企業名をチーム名から排除してみせたJリーグの立ち上げ然り、日本バスケ協会の酷い体質を抜本的に改善してBリーグ始動まで持ち込んだ手腕然り、その他のスポーツにまで幅広く通じた知見の広さ然り。それだけに、このTweetには本当にがっかりしました。

賢明な川淵キャプテンのこと、選手を庇うために無理のある論理と分かっていても敢えて朝日新聞を責めたという見方は出来るかも知れません。しかし、川淵キャプテンは分かっていたはずです。このTweetをすることで、朝日新聞へ火の手が向かう事を。Bリーグ立ち上げの発表前に同窓会を開かれていたほど愛しているはずの川淵キャプテンの母校、三国丘高校の後輩達にも朝日新聞所属の人間が結構いるんじゃないかと思うのですが、彼ら彼女らに対してあんまりじゃないですか。 案の定、このTweetを皮切りに朝日新聞叩きが一斉に加熱しました。そもそもなぜそんな場所にいたんだ、自分達こそ楽しもうとしていたんじゃないか、朝日新聞は反日だから日本代表を陥れたんじゃないか、等々酷い邪推のオンパレードでしたね。何一つ根拠もファクトも無い中傷だけで「朝日新聞ならやりかねない」と思える人の多さに頭が痛くなります。 

まずキャプテンの言っている内容ですが、端的に言うならチクるなってことですよね。悪いことしてたのがバレた小学生が先生に言いつけやがってと逆ギレするようなものです。また、その場で注意出来た状況だったかは明らかではありません。見つけて写真を撮った後でもう女の子達と消えてしまったのならどうしようもありませんし、発見当時の状況が明らかではなかったのに「なぜ注意しなかった」もないもんです。 また、仮に注意出来たとしても、選手達がそれを聞き入れてくれた保証はありません。また、取材する側がそこまで突っ込んだ事を言えるかどうかは難しいですよね。ま、そもそもそこまでメディアに甘える事自体がちゃんちゃらおかしいのですが。 

それに、アジア大会でこういう事件が露見したのはむしろラッキーであったかも知れません。五輪予選や世界選手権出場がかかった場面でこういう事件が発生してしまったら命取りだったでしょう。今回はアジア大会なので、実はダメージはむしろ限定的だったとさえ言えます。この時点で問題点を発見してくれた朝日新聞に日本バスケ界は感謝こそするべきで、逆恨みなど愚かの一言です。買ったヤツらが悪い、それだけの話です。日本バスケの問題点を報道した朝日新聞を責めるのは、かつて内部告発して不正を正してくれた側を苛めて潰した西宮冷蔵の件と構造が全く同じですね。


朝日新聞が反日かどうかなんて反論するのも馬鹿馬鹿しい話は割愛しますが、少なくともバスケットボールを愛する人間なら最低限、朝日新聞がJBA及びBリーグとスポンサーシップ契約を結んだというファクトぐらいは押さえてものを言って頂きたいものです。そんな朝日新聞がなぜそのバスケット代表を陥れる必要があるのでしょうか。スポンサーが金を払っている対象の団体をわざわざ積極的に潰しに行くなんて本当にあると思います? 

そもそも、ここまで貼りまくった朝日新聞と日刊スポーツ(朝日新聞系列)の記事をもう一度読み直して見て下さい。本当に彼らが日本バスケ界に邪悪な意思を持ってジャカルタの件を報じるのならば、週刊誌の記事のようにもっと扇情的な見出しと文面で選手達やJBAをボロクソに叩くはずです。でも、実際の報道記事は本当に感情を押し殺したかのように淡々と事実を列記して書かれているのが、普通の感覚で文章を読める人であれば伝わるはずです。 朝日新聞は単なるスポンサーだけでなく、大手新聞では他に類を見ないバスケットボール専用アカウント、「朝日新聞バスケットボールinfo」まで作成して日本バスケを応援してくれているのです。

これとか見てくださいよ、大学バスケまで特別号外出して応援してくれているんですよ。ここまでやってくれる新聞社が日本バスケを陥れた?済みませんが貴方は一体何を見てそう言ってるんでしょうか。悪いことは言わないので、まずは朝日新聞に対する貴方のその偏見を一度取っ払ってからもう一度一連の報道を読み返して見て下さい。その際、くっだらないまとめサイトの類はくれぐれもご覧にならないことです。某有名まとめサイトも裁判で敗訴が確定したばっかりですし・・・

  4.以上を踏まえて新潟アルビレックスBBの対応は 
→あり得ません。しかもトドメを刺されました 


はい、もう多くを語る必要が無くなってしまいましたね。木下勲選手のスペインでのこの事件により、日本バスケ選手のイメージは更に悪化しました。せっかくJBAの迅速な消火活動で世間がジャカルタの事件を忘れつつあったのに台無しで、消えかけた焼け跡がまた燻り始めた感すらあります。・・・そんな状態で早期復帰を願う署名とか最早正気を疑うしかありませんね。 

そもそも処分から僅か4ヶ月で早期復帰を言い出す時点で、実はジャカルタでやったことはあまり悪いことだと思っていなかったのではないかと疑われても仕方ありません。現時点で署名活動を主導しているのがあくまでチームであって、選手本人の意志が見えないことだけが唯一の救いなので、出来れば本人からきっぱり署名の件は断りを入れて頂くことでこの話は終わらせるのがベストソリューションでしょう。

 本件について語るべきことはまだまだあると思いますが、木下選手の事件発覚により事を急がなければならないと判断し、ここまでで記事を投下します。日本人選手2人目のNBA入りを果たした渡邊雄太選手、NCAAトップの活躍で2019年ドラフトでの1巡目上位指名すら見えてきた八村塁選手という2大スターを擁して史上最強の日本代表チーム誕生が期待される今だからこそ、今年発生したような不祥事にはキッチリ対応して適正な処分が下されなければなりませんし、それを後から蒸し返すことはむしろマイナスにしかならないことを対象4チームには改めて肝に銘じて欲しいなと強く思う次第です。 

 P.S. 


滋賀レイクスターズはこのように処分対象選手の社会奉仕活動及び教育研修レポートを掲載しています。見てみるとちゃんと毎月写真付きでレポートがアップされていました。これが本来あるべき姿だと思います。他3チームも今からでも遅くないので滋賀レイクスターズのこの姿勢を積極的に見習って欲しいものです。


 
The Police
Universal Music LLC
2014-02-20