マジック(3勝)106-94ラプターズ(1勝)
レイカーズ(3勝)108-84ナゲッツ
ホークス(1勝)102-93セルティクス(2勝)
ジャズ(3勝)86-82ロケッツ(1勝)

http://www.nba.com/games/20080426/ORLTOR/boxscore.html

それは2000年の夏のことでした。会社の出張と言いますか何と言いますか、ともかく社用でトロントに行った事があったのですね。何故だか会社指定の飛行機は成田発トロント直行便でなく、ヒューストンで乗り換えてトロントへ向かうという、今ひとつ意味が分からん行程だった訳です。どうせその方がチケット安いとかそういう理由だったのかなと思います。

で、ヒューストンからの結構揺れる中型機のファーストクラスに、何だかやたら背の高い黒人さんがいらっしゃったのですね。もしやNBA選手?とは思ったものの、こちらには確認する術も無く、飛行機はそれなりのフライトタイムを経てトロントに着きました。で、あああのヒトは誰だったのかしらと思いつつ荷物受取所に行ってみると、すぐ間近にその黒人さんが。・・・それが、当時FAになってラプターズとの契約交渉に臨んで来たラシャード・ルイスその人だったのです。時は正にT-MACがラプターズをFAで離れようとしていたタイミングであり、ラプターズフロントはT-MACに代わる選手としてルイスとの契約を考えていたのです。

空港でルイスに気付いたヒトは他に誰もおらず、イエローモンキーな私1人だけが、たまたま持っていた『SLAM』誌のルイスのページを持ってサインを貰いに行ったのでした。ルイスはヘッドホンしたままでしたがこちらのボディーランゲージが通じてサインも写真も快諾してくれ、私はアメリカ大陸に着いた当日に運を使い果たしたのでした(笑)。もちろん正直な気持ちで言えばマジックの選手のサインが欲しかったなあ・・・と思っていましたよ。まあ、今にして思えば私は将来のマジックの柱の1人となる選手のサインをもらっていた訳ですがね。

あれから8年。そのルイスが思い出のトロントで、しかもマジックにとって大事な1勝を挙げる原動力になった事に、かなり感慨深いものがあります。ラプターズファンにとってみれば有難くない話でしょうが、あの時ルイスを歓待しなかった天罰ではないでしょうか(笑)。

冗談はさておき試合展開です。第3戦の成功に気を良くしたラプターズは今回もムーンをSF、バーニャーニをCに入れてきます。対するマジックは不動の5人が今回も先発。背中を痛めていたネルソンもこの重要な一戦に出てきました。

試合はバーニャーニの3で口火が切られたものの、例によってドワイトはアンストッパブルでして1Qから連続ダンクやアリウープを炸裂させます。そしてこの日、マジックは久々に3が入り始めました。やや押し気味に1Qを進めたマジック、31-26でまずまずの立ち上がりです。が、2Qにラプターズが地元の声援を受け攻勢に出ます。序盤、ドワイトを休ませてる間に出てきたゴタートが2ファウルを喫している間に追い付くと、ドワイト登場後も互角以上の戦いを見せ、結局48-53とひっくり返して前半を終えて来ました。

3Q、ラプターズをアクシデントが襲います。ファストブレイクでT.J.フォードからのパスを取ろうとしてスリップしたムーンが足の付け根を痛めてしまい、結局残り6:59時点でベンチに下がります。彼は結局この試合に戻ることはありませんでした。マジックにとって厄介だった彼の不在、じわじわ効いてくることになります。その時点で56-63だった試合が、ドワイトのダンク、ルイスの着実な加点などで徐々にマジックが押し戻す展開となり、結局73-74とほぼ互角のままで最終Qへ突入する事となったのです。

4Q。シュートが今ひとつ決まらないカルデロンがこの日唯一のFGとなるレイアップを決めた直後に、ルイスの同点弾3がゴールを揺らします。ボッシュがダンクで更に突き放そうとしたところで立ち上がったのはネルソン。再度同点に追い付くジャンパー、カポノの3に応戦しての3返し、ジャンパー、3・・・1人で連続10点を決め、マジックリードの流れに試合を戻しました。背中を痛めた悪コンディションだというのに本当ようやります。

パーカーのフックで88-87と再度接近戦を挑むラプターズに対し、マジックはルイスがドライヴしてレイアップ。カポノのファウルからタコルーがFT2本決めて92-87となるも、今度はドワイトのファウルでボッシュの3ポイントプレーが決まり、92-90。地元の熱い声援がラプターズを後押しします。残り3:05。

ここで再度ルイスの見せ場が来ました。ランニングジャンパーをまずルイスが沈め、フォードの外れショットを押し込んだパーカーの根性レイアップに対してはタコルーが3で再度突き放し。そしてフォードのショットをドワイトがブロックで叩き落した後、ネルソンがインサイドへ切り込みながらタコルーへパス。そのタコルーのキングス時代を髣髴とさせるタッチパスがルイスへ渡り、ほぼこの試合を決着付ける3がネットを揺らしたのです。トロントの観客には悪夢の瞬間でありました。

パーカーのレイアップ、ボッシュ、フォード、カルデロンの3。その全てがゴールに至らなかったラプターズは残り35秒にボッシュが意地のダンクを叩き込んだのを最後にほぼ主力の全員をベンチへ下げたのでした。足早に家路を急ぐトロントのお客さん達の何人が、この日27得点13リバウンド5アシスト2スティールを叩き出して地元チームを崖っぷちに追い込んだルイスという選手が、かつてFA交渉のためトロントに来ていた事を知っていたことでしょう?もっとも、あの時ラプターズを選ばずソニックスに残った彼が、マジックに2003年4月20日の1stラウンド、ピストンズ戦以来のプレーオフでのアウェー白星をもたらす事になるとは私も思いませんでしたが。

ドワイトはFG9/12の19得点16リバウンド3アシスト、そしてフランチャイズレコードとなる驚異の8ブロック!やはりドワイトがこういうモンスター級のスタッツを出すとマジックは安定します。タコルーも18得点9リバウンド4アシスト3スティール、FG4/12ながら流石の貢献でした。そして、19得点中12得点を4Qで稼ぎ、“(Point guard) is a very difficult job.There's such a balance between trying to get other guys involved and being aggressive in looking for your shot. It's the hardest job in basketball, and he played great in the fourth quarter.”とヴァンガンディーHCに賞賛されたネルソンがこの日ルイスに次ぐ殊勲選手と言えましょう。T.J.フォードとカルデロンという、NBA最強のPGコンビ相手にネルソンが成し得ている仕事を考えると、彼も随分成長したなと思います。

ラプターズはボッシュが39得点15リバウンドと奮闘したものの、上記の通りムーン離脱が地味なようでかなり痛かったのではないでしょうか。彼がもしも次の試合に出られないようならこのままシリーズ終了なのではないかとさえ思えます。また、3ポイントのFG成功率がマジック37.9%に対し、ラプターズは13.3%と、第3戦の好調を維持出来なかったのも大きかったですね。

ともあれ、これでマジックは第5戦、ホームでの試合を3-1と精神的にも有利な状況で、しかもホームで迎える事となりました。勿論まだシリーズは終わっていません。第3戦のようなプレーをされればラプターズが勝ってしまい、次はラプターズでのホームで第6戦です。最終第7戦まで縺れるという危険な展開は避けたいマジックとしては、次の試合で決めるぐらいのしっかりした気持ちで臨んで欲しいと思います。ともあれ、マジック念願の1stラウンド突破まで、あと1勝です!

なお、この日レイカーズとジャズも3勝を挙げましたね。3タテのナゲッツ、1-3と追い詰められたロケッツ、共に崖っぷちどころか半身空中という感さえあります。せめて意地の1勝で来季へ繋がる試合をしてくれれば・・・と思う次第です。ええ、本当はロケッツにはまだ諦めて欲しくないのですが。

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