(その1・その2より続く)
さて、筆者が広報の言葉に従いニューヨーク入りを果たすと、その広報からメールが入っていました。レブロンが彼のアナウンスメントをグリーンウィッチのボーイズ&ガールズクラブにて午後9時に行う、という内容でした。筆者は車を借りて午後早くには動きましたが、その頃までには誰もがレブロンがマイアミと契約するだろう、とレポートしていたのです。
筆者はその噂に意味を見い出します。レブロンは繰り返し、去就の決断は感情によらないと言っていました。しかし彼は最も深い感情、学生時代の感情、負けるはずがない「スーパーチーム」で友人達に囲まれるという事に彼の決断が拠っているように見受けられたのです。レブロンの人生において唯一、高校生活だけが全く安全と感じられるものであり、彼のその時を取り戻したいという飢餓感が明らかにヒート以外の可能性を打ち負かしていました。
レブロンは彼の高校を牽引するべく出来る全ての事をやってきました。彼のセント・ヴィンセント高校のチームメイト達は彼と共に旅し、パーティーをし、そしていつも彼の背中にいました。いくつかの点で、しかしレブロンはそれは十分では無い事に気付かざるを得なかったのです。彼の高校のチームメイト達は毎晩彼と一緒に立ち上がる事は出来ませんでしたし、一度は出来たチャンピオンシップを彼が勝ち取るのを手伝う事も出来ませんでした。彼は彼らをクローンする必要、NBAレヴェルで代理を作り出す必要があったのです。それはキャヴスロスターの誰にも、他のチームの誰にも明らかに不可能でした。ウェイドとボッシュだけが―レブロンと一緒にリーグに入り、オールスターゲームでレブロンと結び付き、北京で一緒に金メダルを勝ち取った―特別なケミストリーと才能のコンビネーションをもたらしたのです。筆者は「チャンピオンシップを勝ち取りたい」というレブロンの言葉を引用しましたが、彼がまた必要なのは友人です。彼は一人になれない、のです。
彼は確かにボーイズ&ガールズクラブでは一人にはなれなかったでしょう。建物の中はVIP、ESPNの社員、そしてその殆どが録音ルームでピザをがっついて食べている子供達で一杯でした。そんな子供の中でも体育館に隠れてバスケットをする子供はいます。筆者はそんな子供にH-O-R-S-Eをやるのかと尋ねますが、彼はH-O-R-S-E自体を知りませんでした。それでも何人かの子供達に筆者はレブロンが好きかを尋ねて回ります。果たして彼らはレブロンのファンであり、ジャージなり靴なり持っており、新しいのを買い直す心配などする事無く、レブロンがクリーヴランドに留まる事を信じていたのです。
9時数分前、レブロンが会場に到着します。彼と一緒にいたのは彼のアドヴァイザー達、ガールフレンドのサヴァンナ(管理人注:因みに彼女はキャヴス残留派でした)とカニエ・ウエストだったのです。なぜカニエ・ウエストなのかと筆者からも軽くツッコミが入ってます。彼女と雑談の後、ESPNから放送開始の時間である事が告げられ、彼女とハグ&キスしたレブロンは「僕に幸運を祈って」と告げます。幸運、ですか・・・。
かくて我々が写真や動画で見慣れた、ディレクターチェアに腰掛けて対面するレブロンとジム・グレイのあの絵になって、番組が始まりました。誰に言われるでもなく、誰もが無口になります。レブロンと彼の決断についてはESPNのメインスタジオのアナリスト達によって議論されていましたが、その音声も映像も現場の体育館には流されておらず、そのため1分、3分、10分と教会のような静かさだったのです。遂にステージマネージャーがグレイにキュー出しし、グレイは緊張をほぐすような質問を複数レブロンに投げ掛けましたが、体育館の誰もそれを聞いてはいなかったのです。そりゃそうですよね、発表寸前ですし。
グレイがスタジオへ一旦返します。インタヴューの中断が延々続き、22分後に復活。グレイがいよいよ件の質問に入りました。「あなたの決断は?」レブロンは眉を潜めて待ちます。そして言ったのです。「この秋、僕は僕の才能をサウスビーチへ持ち込み、マイアミ・ヒートに合流する」と。先程の子供達はうめき声を上げます。口があんぐり開いている子、混乱している子。マイアミ?彼はマイアミって言ったの?外の客はブーイングを始めます。
レブロンは心から、前準備無しで話しているように見えていて、それは良い事ではない、彼はリハーサルするべきだったと筆者は綴ります。レブロンのアナウンスを出す、より良い方法がもっと一杯あった、それは彼が次に話す事、そして次、ファンと彼の未来、そして特にクリーヴランドについて言えるのだと。「説明するのは難しい。7年間、あのフランチャイズ、あの街に捧げた僕の心は全てだった」彼はこう言いました。彼に近い人間は彼に(管理人注:話す内容について)一線を引くべきでした。おそらく時間は無かったのでしょう。しかし、レブロンの決断を秘密へと保ち防ぐ力の半分を、彼が(管理人注:このショーに向けて)準備するように注ぐべきでした、そうすれば全ての事がより良く行えたでしょうに。
筆者は体育館を出るとボーイズ&ガールズクラブのエグゼクティブディレクターオフィスに件の広報がいるのを見つけました。チョコを口にする彼は腎臓の結石を丁度除去したかのようでした(管理人注:言うまでもなく一仕事終わって肩の荷が降りた比喩)。筆者は何故彼ら広報が「The Decision」をグリーンウィッチで行ったかを尋ねました。「ニュートラルなロケーション」、彼は言ったのです。ニュートラル?ニックス国の心臓部で?あの体育館の中にいた半分の人間はレブロンにニックスでプレーして欲しかったのに。広報は肩をすくめました。
筆者はもっと沢山広報に質問したかったのですが、別の男性が息を切らしながらオフィスに走り込んできて、何やらやるべき事を告げました。今すぐに。筆者がどうしたのかと尋ねると、子供達だ、と彼は答えたのです。彼らは暑い体育館に1時間も閉じ込められ、動く事も出来ず、そしてレブロンのスポンサーでまあるヴィタミンウォーターを大量に飲んでいました。そう、トイレに行かないといけなかったのです。レブロンに期待を裏切られ唖然とする子供達、ESPNの特茶番に駆り出された為に振り回される子供達・・・筆者はあの時ただ後ろに写っていた子供達の姿も容赦無い筆致で描いていきます。
我々は皆心の底からナルシストなのだ、とフロイトは言いました。我々は生まれた時からナルシズムが組み込まれている、しかし我々はそれと戦い、斥ける。それが我々がナルシズムを外に対して表す事へと誘惑される理由なのだと。子供達、犯罪者、ユーモリスト、そして猫が我々の注意を惹かずにいられないような羞恥心の無い自己愛を抱くのだ、と彼は言います。あたかも我々が至福の喜びの心情を持って彼らを妬むかのように。
フロイトが「The Decision」の余波を目撃したなら、(管理人注:自らの見解の正しさに)葉巻を吹かせていたことでしょう。アメリカ人がナルシズムに誘惑されている?彼らはそれを示す面白い方法を持っていました。「The Decision」の数秒のうたに嘲りの地滑りが来ます。スポーツライター達、ブロガー達、ツイッターユーザー達、専門家達、コメディアン達、タクシードライバー達・・・世界の半分がレブロンが示した我慢ならない傲慢さを告発しているのです。彼への批判の半分も同じく傲慢に聞こえますが(←管理人:グサッグサッグサッ)
キャヴスのオーナー、ダン・ギルバートは血で書かれた長文を発表しました。「フェイタル・アトラクション」の撮影台本からのページのように読めましたが。この後に続くジョン・メイヤーのくだりは何やらシーモネーター気味なので端折りますが、レブロンはナルシストと呼ばれないならば、少しばかりエゴが強すぎると嘲笑されていました。マイアミの寡頭制国家になる為に、彼の立憲君主国(管理人注:勿論キャヴスの意)を捨てた事について、です。ジョーダンがそれを言います。レジー・ミラーがそれを言います。チャールズ・バークリーがそれを言います。「もし俺が25だったなら」バークリーは言います。「俺がthe Guyだって事をはっきりさせたかっただろうね。レブロンは決して『the Guy』にはなれないよ。」
レブロンは元選手達からの批判は予想していたと言います。「チャールズは多分面白くしようとしたんだろう」彼は言い、暗い口調で付け足しました。「僕には面白くなかったけどね」
筆者はレブロンの長年の友にしてマネージャーのマーヴェリック・カーター(管理人注:先日人種差別発言を口走ったあのバカーターさんです)に、特茶番の数日後電話します。彼は混乱し、戸惑っていました。まるでガレージで薬をミックスしていて、アクシデント的にお隣さんへぶちまけてしまった科学通みたいに。「どうやってこんな大きい話になってしまったのか」彼は泣きそうな口調で問いかけます。「心の中でマルコム・グラドウェルの本の事を考えていたんだ―何が臨界点だったんだろう?」
バカーター曰く、全ての事はグレイに始まったのだそうです。彼は1ペニーも支払われてませんが、その全てはグレイが確かめたのです。グレイが言うには、そのアイデアは彼がバカーターとウィリアム・モリス・エンデヴァー・エンターテイメントのヘッド、アリ・エマニュエルにNBAファイナル第2戦のコートサイドで会った時に初めて彼に沸き起こったそうです。「私は尋ねたんだ、『レブロンが新しいチームと契約したら私が最初のインタヴューをレブロンに行えますか?それよりも』私は言ったよ。『我々がネットワークTVの1時間を買い、生のテレビでレブロンがどこでプレーするのかアナウンスする』と。私がそれを口から出すとすぐアリが『素晴らしいアイデアだ』と言ったんだ。そしてマーヴェリックが言ったのさ『僕らはお金はいらないよ。チャリティーに大貢献するんだ』。そしてそのアイデアが自身の生命を持ったのさ(管理人注:一人歩きし始めた、の意)」。カーターとエマニュエルはABCへ行った、とグレイは言います。「で、そのアイデアはABCからESPNへ行ったんだ」。・・・ABCとESPNは同じディズニー系列の放送局なんですね。以上が、あの茶番実現への裏舞台だった訳です。
レブロンはいかにしてそれが起きたか、それから何が起きたかに全く興味がありません。彼は正しい決断をした、と彼は言うのです。彼も彼の回りの人々もそれを知っています。「彼らは私がハッピーなのを見てハッピーなんだ」と彼は言います。「それが、彼らが私の顔に見て取れる事なんだ。『君がそう(管理人注:幸せに)見えるのを見てしばらくになるね』と彼らは言うのさ」・・・これはつまり、あの決断以前、キャヴス時代は幸せに見えなかったという事でしょう。
事実、誰もがレブロンの幸せを見て取れます。ストロボの光とピンクのスモークの中でマイアミに紹介されているヴィデオに正にそれがありました。彼とウェイドとボッシュが微笑み闊歩しながらステージへ来て、そして誰もレブロンがとても特殊な歩き方をしている事には気付かないのです。それは彼が何年も前―彼が高校のチームメイトと共にコートに入った時にしていたクラッチ姿勢のダックウォークです。レブロン自身さえも(管理人注:このダックウォークに)気付いていませんでした。筆者がそれを指摘すると、レブロンは唖然としているように聞こえたのです。
ビシンジャーはマイアミからの最初の写真を調べ、最初のニュースカンファレンスを見ました。「私がウェイドとボッシュと一緒にそこに座っているレブロンの顔を見た時、誰もが持つ全ての怒りのため、レブロンが死んで天国へ行ってしまったのは明らかだった」「大衆心理学はいつも危なかっしいものだが、彼は本当に高校の経験を複製しているんだな」と彼は言うのです。
この、他の多幸感ある瞬間において一つの悲しい言は、レブロンのゲーム(=バスケ)について言われる酷い事だとレブロンは言います。「人々は僕がどれだけゲームを愛しているかを疑う。それは僕が決して大事にしなかった事の無いものなのに。毎晩コートで全てを捧げるし、もしも僕が100%を捧げていないなら、僕は自らを批判するよ」・・・この言は良し、ですね。
レブロンはキャヴスの為にプレーするため戻る日を想像出来ますが、枯葉来年キャヴスと対戦する事について、より考えています。彼は上手くプレーしたい―本当に上手く。「僕は凄くモチヴェーションを持ってるんだ。沢山のモチヴェーションをね」レブロンは不気味に言うのです。
彼がプレーを見せたい相手はキャヴスファンじゃなく、オーナーズボックスにいる男です。「彼がレブロンについてずっとケアしていたとは思わない。母さんはいつも僕に言ったものさ、『人は逆境に遭うと(管理人注:本質が)明るみに出るものよ』って。僕と僕の家族はあの男のキャラクターを見ているんだ」
クリーヴランドを離れる決断は辛かった、彼は再び言うのです。「それは僕の心に触れたよ。多くの人々が傷付いただろうって分かった。」そして、彼は(キャヴスオーナー)ギルバートの手紙を読み、それは局所麻酔剤のように働いたのです。「僕が正しい決断をしたんだと、それ(手紙)が僕をより楽に感じさせてくれたよ。」
記事の最後に、レブロンはオハイオの地に住み続けられるのか尋ねられます。「言ってるように僕はアクロンにいるよ!」と明るくレブロンは言います。「多くの夏をここで過ごすつもりだ。ここは僕の故郷だ。アクロン、オハイオは僕の故郷さ。いつもここにいるだろう。僕は今でも母校の高校でワークアウトしているんだよ。」彼はこの朝、実際ワークアウトしたのです。筆者が「愛する母校の人々はどう君を歓迎するのか」と尋ねると「素晴らしいよ。彼らは僕を愛してる。彼らは何だろうと僕をサポートしてくれるんだ」と答えるくだりで、この記事は締め括られたのです。
(以下、レブ論・8~『GQ』誌レブロンインタヴュー精読・その4 インタヴュアーによる補足、に続く)
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さて、筆者が広報の言葉に従いニューヨーク入りを果たすと、その広報からメールが入っていました。レブロンが彼のアナウンスメントをグリーンウィッチのボーイズ&ガールズクラブにて午後9時に行う、という内容でした。筆者は車を借りて午後早くには動きましたが、その頃までには誰もがレブロンがマイアミと契約するだろう、とレポートしていたのです。
筆者はその噂に意味を見い出します。レブロンは繰り返し、去就の決断は感情によらないと言っていました。しかし彼は最も深い感情、学生時代の感情、負けるはずがない「スーパーチーム」で友人達に囲まれるという事に彼の決断が拠っているように見受けられたのです。レブロンの人生において唯一、高校生活だけが全く安全と感じられるものであり、彼のその時を取り戻したいという飢餓感が明らかにヒート以外の可能性を打ち負かしていました。
レブロンは彼の高校を牽引するべく出来る全ての事をやってきました。彼のセント・ヴィンセント高校のチームメイト達は彼と共に旅し、パーティーをし、そしていつも彼の背中にいました。いくつかの点で、しかしレブロンはそれは十分では無い事に気付かざるを得なかったのです。彼の高校のチームメイト達は毎晩彼と一緒に立ち上がる事は出来ませんでしたし、一度は出来たチャンピオンシップを彼が勝ち取るのを手伝う事も出来ませんでした。彼は彼らをクローンする必要、NBAレヴェルで代理を作り出す必要があったのです。それはキャヴスロスターの誰にも、他のチームの誰にも明らかに不可能でした。ウェイドとボッシュだけが―レブロンと一緒にリーグに入り、オールスターゲームでレブロンと結び付き、北京で一緒に金メダルを勝ち取った―特別なケミストリーと才能のコンビネーションをもたらしたのです。筆者は「チャンピオンシップを勝ち取りたい」というレブロンの言葉を引用しましたが、彼がまた必要なのは友人です。彼は一人になれない、のです。
彼は確かにボーイズ&ガールズクラブでは一人にはなれなかったでしょう。建物の中はVIP、ESPNの社員、そしてその殆どが録音ルームでピザをがっついて食べている子供達で一杯でした。そんな子供の中でも体育館に隠れてバスケットをする子供はいます。筆者はそんな子供にH-O-R-S-Eをやるのかと尋ねますが、彼はH-O-R-S-E自体を知りませんでした。それでも何人かの子供達に筆者はレブロンが好きかを尋ねて回ります。果たして彼らはレブロンのファンであり、ジャージなり靴なり持っており、新しいのを買い直す心配などする事無く、レブロンがクリーヴランドに留まる事を信じていたのです。
9時数分前、レブロンが会場に到着します。彼と一緒にいたのは彼のアドヴァイザー達、ガールフレンドのサヴァンナ(管理人注:因みに彼女はキャヴス残留派でした)とカニエ・ウエストだったのです。なぜカニエ・ウエストなのかと筆者からも軽くツッコミが入ってます。彼女と雑談の後、ESPNから放送開始の時間である事が告げられ、彼女とハグ&キスしたレブロンは「僕に幸運を祈って」と告げます。幸運、ですか・・・。
かくて我々が写真や動画で見慣れた、ディレクターチェアに腰掛けて対面するレブロンとジム・グレイのあの絵になって、番組が始まりました。誰に言われるでもなく、誰もが無口になります。レブロンと彼の決断についてはESPNのメインスタジオのアナリスト達によって議論されていましたが、その音声も映像も現場の体育館には流されておらず、そのため1分、3分、10分と教会のような静かさだったのです。遂にステージマネージャーがグレイにキュー出しし、グレイは緊張をほぐすような質問を複数レブロンに投げ掛けましたが、体育館の誰もそれを聞いてはいなかったのです。そりゃそうですよね、発表寸前ですし。
グレイがスタジオへ一旦返します。インタヴューの中断が延々続き、22分後に復活。グレイがいよいよ件の質問に入りました。「あなたの決断は?」レブロンは眉を潜めて待ちます。そして言ったのです。「この秋、僕は僕の才能をサウスビーチへ持ち込み、マイアミ・ヒートに合流する」と。先程の子供達はうめき声を上げます。口があんぐり開いている子、混乱している子。マイアミ?彼はマイアミって言ったの?外の客はブーイングを始めます。
レブロンは心から、前準備無しで話しているように見えていて、それは良い事ではない、彼はリハーサルするべきだったと筆者は綴ります。レブロンのアナウンスを出す、より良い方法がもっと一杯あった、それは彼が次に話す事、そして次、ファンと彼の未来、そして特にクリーヴランドについて言えるのだと。「説明するのは難しい。7年間、あのフランチャイズ、あの街に捧げた僕の心は全てだった」彼はこう言いました。彼に近い人間は彼に(管理人注:話す内容について)一線を引くべきでした。おそらく時間は無かったのでしょう。しかし、レブロンの決断を秘密へと保ち防ぐ力の半分を、彼が(管理人注:このショーに向けて)準備するように注ぐべきでした、そうすれば全ての事がより良く行えたでしょうに。
筆者は体育館を出るとボーイズ&ガールズクラブのエグゼクティブディレクターオフィスに件の広報がいるのを見つけました。チョコを口にする彼は腎臓の結石を丁度除去したかのようでした(管理人注:言うまでもなく一仕事終わって肩の荷が降りた比喩)。筆者は何故彼ら広報が「The Decision」をグリーンウィッチで行ったかを尋ねました。「ニュートラルなロケーション」、彼は言ったのです。ニュートラル?ニックス国の心臓部で?あの体育館の中にいた半分の人間はレブロンにニックスでプレーして欲しかったのに。広報は肩をすくめました。
筆者はもっと沢山広報に質問したかったのですが、別の男性が息を切らしながらオフィスに走り込んできて、何やらやるべき事を告げました。今すぐに。筆者がどうしたのかと尋ねると、子供達だ、と彼は答えたのです。彼らは暑い体育館に1時間も閉じ込められ、動く事も出来ず、そしてレブロンのスポンサーでまあるヴィタミンウォーターを大量に飲んでいました。そう、トイレに行かないといけなかったのです。レブロンに期待を裏切られ唖然とする子供達、ESPNの特茶番に駆り出された為に振り回される子供達・・・筆者はあの時ただ後ろに写っていた子供達の姿も容赦無い筆致で描いていきます。
我々は皆心の底からナルシストなのだ、とフロイトは言いました。我々は生まれた時からナルシズムが組み込まれている、しかし我々はそれと戦い、斥ける。それが我々がナルシズムを外に対して表す事へと誘惑される理由なのだと。子供達、犯罪者、ユーモリスト、そして猫が我々の注意を惹かずにいられないような羞恥心の無い自己愛を抱くのだ、と彼は言います。あたかも我々が至福の喜びの心情を持って彼らを妬むかのように。
フロイトが「The Decision」の余波を目撃したなら、(管理人注:自らの見解の正しさに)葉巻を吹かせていたことでしょう。アメリカ人がナルシズムに誘惑されている?彼らはそれを示す面白い方法を持っていました。「The Decision」の数秒のうたに嘲りの地滑りが来ます。スポーツライター達、ブロガー達、ツイッターユーザー達、専門家達、コメディアン達、タクシードライバー達・・・世界の半分がレブロンが示した我慢ならない傲慢さを告発しているのです。彼への批判の半分も同じく傲慢に聞こえますが(←管理人:グサッグサッグサッ)
キャヴスのオーナー、ダン・ギルバートは血で書かれた長文を発表しました。「フェイタル・アトラクション」の撮影台本からのページのように読めましたが。この後に続くジョン・メイヤーのくだりは何やらシーモネーター気味なので端折りますが、レブロンはナルシストと呼ばれないならば、少しばかりエゴが強すぎると嘲笑されていました。マイアミの寡頭制国家になる為に、彼の立憲君主国(管理人注:勿論キャヴスの意)を捨てた事について、です。ジョーダンがそれを言います。レジー・ミラーがそれを言います。チャールズ・バークリーがそれを言います。「もし俺が25だったなら」バークリーは言います。「俺がthe Guyだって事をはっきりさせたかっただろうね。レブロンは決して『the Guy』にはなれないよ。」
レブロンは元選手達からの批判は予想していたと言います。「チャールズは多分面白くしようとしたんだろう」彼は言い、暗い口調で付け足しました。「僕には面白くなかったけどね」
筆者はレブロンの長年の友にしてマネージャーのマーヴェリック・カーター(管理人注:先日人種差別発言を口走ったあのバカーターさんです)に、特茶番の数日後電話します。彼は混乱し、戸惑っていました。まるでガレージで薬をミックスしていて、アクシデント的にお隣さんへぶちまけてしまった科学通みたいに。「どうやってこんな大きい話になってしまったのか」彼は泣きそうな口調で問いかけます。「心の中でマルコム・グラドウェルの本の事を考えていたんだ―何が臨界点だったんだろう?」
バカーター曰く、全ての事はグレイに始まったのだそうです。彼は1ペニーも支払われてませんが、その全てはグレイが確かめたのです。グレイが言うには、そのアイデアは彼がバカーターとウィリアム・モリス・エンデヴァー・エンターテイメントのヘッド、アリ・エマニュエルにNBAファイナル第2戦のコートサイドで会った時に初めて彼に沸き起こったそうです。「私は尋ねたんだ、『レブロンが新しいチームと契約したら私が最初のインタヴューをレブロンに行えますか?それよりも』私は言ったよ。『我々がネットワークTVの1時間を買い、生のテレビでレブロンがどこでプレーするのかアナウンスする』と。私がそれを口から出すとすぐアリが『素晴らしいアイデアだ』と言ったんだ。そしてマーヴェリックが言ったのさ『僕らはお金はいらないよ。チャリティーに大貢献するんだ』。そしてそのアイデアが自身の生命を持ったのさ(管理人注:一人歩きし始めた、の意)」。カーターとエマニュエルはABCへ行った、とグレイは言います。「で、そのアイデアはABCからESPNへ行ったんだ」。・・・ABCとESPNは同じディズニー系列の放送局なんですね。以上が、あの茶番実現への裏舞台だった訳です。
レブロンはいかにしてそれが起きたか、それから何が起きたかに全く興味がありません。彼は正しい決断をした、と彼は言うのです。彼も彼の回りの人々もそれを知っています。「彼らは私がハッピーなのを見てハッピーなんだ」と彼は言います。「それが、彼らが私の顔に見て取れる事なんだ。『君がそう(管理人注:幸せに)見えるのを見てしばらくになるね』と彼らは言うのさ」・・・これはつまり、あの決断以前、キャヴス時代は幸せに見えなかったという事でしょう。
事実、誰もがレブロンの幸せを見て取れます。ストロボの光とピンクのスモークの中でマイアミに紹介されているヴィデオに正にそれがありました。彼とウェイドとボッシュが微笑み闊歩しながらステージへ来て、そして誰もレブロンがとても特殊な歩き方をしている事には気付かないのです。それは彼が何年も前―彼が高校のチームメイトと共にコートに入った時にしていたクラッチ姿勢のダックウォークです。レブロン自身さえも(管理人注:このダックウォークに)気付いていませんでした。筆者がそれを指摘すると、レブロンは唖然としているように聞こえたのです。
ビシンジャーはマイアミからの最初の写真を調べ、最初のニュースカンファレンスを見ました。「私がウェイドとボッシュと一緒にそこに座っているレブロンの顔を見た時、誰もが持つ全ての怒りのため、レブロンが死んで天国へ行ってしまったのは明らかだった」「大衆心理学はいつも危なかっしいものだが、彼は本当に高校の経験を複製しているんだな」と彼は言うのです。
この、他の多幸感ある瞬間において一つの悲しい言は、レブロンのゲーム(=バスケ)について言われる酷い事だとレブロンは言います。「人々は僕がどれだけゲームを愛しているかを疑う。それは僕が決して大事にしなかった事の無いものなのに。毎晩コートで全てを捧げるし、もしも僕が100%を捧げていないなら、僕は自らを批判するよ」・・・この言は良し、ですね。
レブロンはキャヴスの為にプレーするため戻る日を想像出来ますが、枯葉来年キャヴスと対戦する事について、より考えています。彼は上手くプレーしたい―本当に上手く。「僕は凄くモチヴェーションを持ってるんだ。沢山のモチヴェーションをね」レブロンは不気味に言うのです。
彼がプレーを見せたい相手はキャヴスファンじゃなく、オーナーズボックスにいる男です。「彼がレブロンについてずっとケアしていたとは思わない。母さんはいつも僕に言ったものさ、『人は逆境に遭うと(管理人注:本質が)明るみに出るものよ』って。僕と僕の家族はあの男のキャラクターを見ているんだ」
クリーヴランドを離れる決断は辛かった、彼は再び言うのです。「それは僕の心に触れたよ。多くの人々が傷付いただろうって分かった。」そして、彼は(キャヴスオーナー)ギルバートの手紙を読み、それは局所麻酔剤のように働いたのです。「僕が正しい決断をしたんだと、それ(手紙)が僕をより楽に感じさせてくれたよ。」
記事の最後に、レブロンはオハイオの地に住み続けられるのか尋ねられます。「言ってるように僕はアクロンにいるよ!」と明るくレブロンは言います。「多くの夏をここで過ごすつもりだ。ここは僕の故郷だ。アクロン、オハイオは僕の故郷さ。いつもここにいるだろう。僕は今でも母校の高校でワークアウトしているんだよ。」彼はこの朝、実際ワークアウトしたのです。筆者が「愛する母校の人々はどう君を歓迎するのか」と尋ねると「素晴らしいよ。彼らは僕を愛してる。彼らは何だろうと僕をサポートしてくれるんだ」と答えるくだりで、この記事は締め括られたのです。
(以下、レブ論・8~『GQ』誌レブロンインタヴュー精読・その4 インタヴュアーによる補足、に続く)
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