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あれから1年が経ちました。

あの日、私は会社で上司と打ち合わせている時にあの長く揺れ続けた地震に遭いました。思えばそれまで、大き目の地震が起きたら私が職場のTVを真っ先につけていたものでしたが、あの時は誰が言うでもなくTVのスイッチが入ってました。そんな事は冬季五輪の真央ちゃんVSキムヨナ以来の事でした。

会社の電話では繋がらないので、私物の携帯で妻の無事を確認して一安心していた私を待っていたのは、あの信じ難い津波の映像でした。なんでこんな時に海沿いを車で走ってるんだ!と心の中で叫んでいたのを覚えています。ともあれ、我々は会社で待機した後、帰りたい人間は帰って良しとなり、我々は何人かで集団下校宜しく歩いて帰ったのです。私は職場の方が車で送って下さるというので甘えようとしましたが、車は全く動かない大渋滞であり、程無く私は車を諦め、徒歩行中に既に考えていたプラン、自転車帰宅に切り替えたのです。

誰しもが頭に浮かんだであろうドンキホーテは既に高価な電動アシスト付き自転車しかありませんでしたが、幸いにも私は真面目そうなお父さん達がやっていた自転車屋を見つける事が出来ました。量販店では無いので1台1台ちゃんと自転車を組み立てて下さったその自転車屋さんは確かに自転車を買うのに時間を要しましたが、それが販売する自転車が壊れたりしないように丁寧な作業をしているが故の事であると分かった私は、たまにイラついて「早く売れ」みたいな事を言ってるおじさんに「こんな閉店時間過ぎても店開けて売って下さってるんですから」となだめながら自分の分を待ったのです。私の前後のお父さん達は私よりももっと遠くまで歩いて帰ろうとしてたのを良く覚えています。

自転車屋のお父さんが在庫から引っ張り出して来たデッドストックながら純国産製の自転車をようやく確保して夜の道を爆走し続け、ようやく家で待つ妻の元に帰り着いたのが深夜1時の事でした。確かに苦労はしましたが地方営業で自転車でこれぐらいの距離は普通に走っていた事もある私にはそれは大した苦労ではありませんでした。何より、あの時もっと大変な目に遭っている方々がこの国にはいたのですから。

翌日、土曜日。ニュースで福島の原発が危険である旨の報道が始まっていました。私は高校時分には「朝まで生テレビ」で原発の回を見ていた人間です。広瀬隆という方が「東京に原発を!」という本を書いていた事も知っていましたので、彼がテレビに出演するという事の意味も知っていました。そして番組を見ながら、反対派に対して小馬鹿にしたような言い草ばかりする原発賛成派に対し、強い違和感を感じたのです。

大学の頃には友人が反原発サークルに属していました。私は他のサークルに入っていたので彼のサークルには属していませんでしたが、彼のサークルの展示を見て更に知識を得ました。彼のサークルが主張していた事の正しさは今日証明された訳です。恐らく、彼は就職に苦労したはずです。正しい知識を得ていたが故に・・・。その後も東海村事故のルポ、チェルノブイリについてのあれこれを読んで知る度に私は原発に対する不信感を強めていたのです。

そしてあの土曜、妻と買い物に出ていた先で、私は関西在住の友人から福島原発1号機が爆発した事を知ります。今まで得て来た事前知識に加えて様々なネットのソースを見ていた私は、それが何を意味するか、そしてその時に政府やメディアがどういう発表をするか、そこに真実はあるかも残念ながら想像はついていました。買うものを買って自宅に戻り妻と相談した結果、私は一旦関西の実家へ向かったのです。実家でたまたま兄夫婦に出くわして、「そこまですることなかったんとちゃうか?」と兄に言われたのを覚えています。まあこの時はそうだったかも知れません。そんな兄も今は「お前が正しかった」と言ってくれますがね。

しかし、会社は休んでくれません。幸いあの段階ではその後東京に深刻なフォールアウトは無かったようだったので、一旦私達夫婦は結局東京に引き返しました。そして、日曜深夜=月曜早朝、たまたま起きていた私達夫婦はあの計画停電により、電車が一部運休する事を知ったのです。そんな重要な事が、殆どの人間が眠りについている深夜に発表される異常さに私達は明らかに深刻な事態である事を悟りました。その場で妻は実家に帰る事を決意し、私も早朝に電車に乗らないと出勤すらままならなくなるだろうと考え、二人で始発に近い電車に乗るべく駅へ向かったのです。駅では既にその日運休が決まっている路線の前で立ち尽くすヒトがいました。一方で我々と同じく異常事態を察した人間が集まってもいたのです。電車は今まで見た事が無い程に混雑していきました。

妻はそのまま東京駅へ直行させ、私はほぼ一番乗りぐらいの勢いで会社へ行き、電車に乗る事さえままならない会社の皆様からの連絡電話を受けまくりました。そしてそれが落ち着いて業務に戻っていた午前中、3号機が爆発したのです。リアルタイムで状況を把握していた私はそれが1号機の時と明らかに違う爆発なのを知っていました。そして私の会社は計画停電を受け、早目の退社を許されたのです。更には翌日も出社しなくても良い、という有難いお達しまで出ました。

結局私は仕事に区切りをつけて午後早々に退社、そのまま先に実家に帰した妻のところへ合流。会社はそのまま3/18までの臨時休業が決定し、その後の土日及び21日の祝日もあいまって、私は3/21まで妻と共に疎開しながら、あの異常な時期を過ごしたのです。原発事故に対してバケツで水をかける事しか出来ないという信じ難い事態、「直ちに影響は無い」(=長期的には影響あり)という欺瞞に満ちた言葉、福島で起きている危機から目を逸らさせる為だったとしか思えない計画停電、全く信じるに値しないTV報道(特に民放)、そして洗脳でもするかのようなあの「ぽぽぽぽ〜ん」・・・あれは何もかも狂った世界でした。



NHKの水野さんという解説委員だけがかろうじて正しい解説を心掛けているように見えましたが、彼すらもしゃべっている内容に明らかに制限がありました。恐らくは言ってはいけない事があったのでしょう。そして3/16には天皇陛下からのヴィデオ・メッセージがTVで放送されました。私はあれを見た時やっと「ああ、この国はまた敗戦したのか」と悟ったのでした。東北の都市は空襲を受ける代わりに津波に遭い、原爆投下の代わりに原子炉を爆発させてもっと多い量の放射性物質を飛散させ、勝ち目の無い冷却作業に決死の特攻隊を突っ込ませ、再三の大本営発表の末に待っていたのは玉音放送・・・太平洋戦争の終わりと何もかも同じではないですか。



原子力発電についてのウソは、今では広く知られるところとなりました。殆ど全ての原発が止まっても電力が不足していない事実、地震が起きる可能性が本当は高かったにも拘わらず地盤調査をでっち上げて建設されていた事・・・反対派の方々が警鐘を鳴らし、賛成派が冷笑していた事は残念なことに正しかったのです。ああ、そう言えば戦前の日本もシミュレーションで負けた結果を無かった事にしたりしてましたね。今日の「食べて応援」というフレーズも私には「欲しがりません勝つまでは」と同じように聞こえます。

「何ベクレルまでは食べても安全」「がれきを受け入れろ」などと言っている人間と、「原発は安全、絶対に放射性物質が漏れるような事故は起きない」と言っている人間は概ねイコールであるように私には見えます。500ベクレル以下は安全なんて保証はどこにもありません。セシウムだけが放射性物質ではないのですから、がれきだって受け入れても大丈夫かどうかは神のみぞ知る、なのです。でももっと気になるのは、正常化バイアスの中で何事も無かったかのように暮らしている人々の姿です。

津波の爪あとは未だに残ってはいますが、いつかはがれきを片付ける事は出来ます。しかし福島の事故はまだ終わっていません。4号機の燃料プールが崩壊したら日本はもう終わりだ、とも言われます。そうでなくとも放射性物質は東日本に幅広くばら撒かれ、長く消える事はありません。あの日、津波が来る可能性を考えずに避難しなかった人たちと今日東日本に暮らす私達は、実は同じなのかも知れないのです。

あれからずっと、深夜にひっそり流されるドキュメント番組まで含めて津波関連の映像や原発の情報を一杯見て、読んできました。くだらないバラエティー番組を見る量もいっそう減らし、平日も休日もNBA以外はニュース中心に見ています。相変わらず大本営発表ばかり流れているな、と思いながら。それすらも見ないで殆どの人々は、あの日より前と同じ日常がずっと続くと信じているようにさえ見えます。



チェルノブイリで事故が起きた時、The Smithsというイギリスのバンドは原発事故ニュース直後に能天気にワム!のこの曲を流すラジオに激怒して、「パニック」という曲を書き上げました。曲調の明るさからは考えられない正常化バイアスへの怒りを正確に示した名曲だと思います。歌詞の大意は例えばこちらで見る事が出来ます。ここで歌われている内容と今の日本の状況と、何が違うでしょうか?



何も海外のアーティストを引用するまでも無く、日本にもあの時の事故を受けて書かれた歌はありました。ブルーハーツは「チェルノブイリには行きたくねぇ」と歌いました。そして今、この日本がチェルノブイリです。ドワイト・ハワードがこんな時によく日本に来てくれた、と私が思った所以です。



忌野清志郎という巨人については皆さんもご存知でしょう。彼が時にタイマーズなんて変装バンドまでやって訴えてきた内容を私はずっと覚えていました。彼も何も間違った内容を歌っていなかったのですが、我々は愚かにも本当に事故が起きるまでそれに気付きませんでした。



今日、この事故を受けてこんなメッセージを出せるアーティストはその清志郎をリスペクトしてやまない漢、斉藤和義だけですね。もちろんこの歌がTVで流れる事は殆どありません。アーティストと言われる人間の中で彼以外殆ど誰も立ち上がらないという事実が本当に残念です。



恐らく今日も、TVは津波の事を中心に報道し、原発は報じるにしてもあくまでサブ扱いでしょう。どちらも言うまでも無く悲劇であり、決して忘れる事はありません。しかし、津波の水は引いても、現在も福島の事故は終わっていません。「冷温停止」と「冷温停止状態」の違いを知らないと、またしても我々は騙されます。除染?いくら除染してもまた山から放射性物質が飛んでくるのです。そんな簡単に綺麗になると思ったらここでも騙されますよ。

早川由紀夫教授は「勉強しないと死ぬぞ」と言います。同感です。地震・津波の被害を免れた人間にも、このままではこれから更にあの地震の影響が及ぶと私は確信しています。私も大した人間じゃありませんので、一方的なメッセージをもって「こうでなければならない」と言うつもりはありません。ただ、これからは何も考えずにテレビや新聞で流れる情報をそのまま鵜呑みにして、何も疑わずに生きていくようでは本当に危ない、という事だけ覚えていて下さい。あなたが原発に賛成であれ反対であれ、まず今何が起きてるかを正確に理解しないと本当に危険なんだ、という危機感だけは忘れずにこれからを生きていきましょう。

P.S.

http://degisaitama.web.fc2.com/itabashi/

例えばこちらなどで基本的な知識を得られます。時間の無い方はこちら(PDF注意)なんかもありますのでどうぞ。

P.S.2

http://pon.bex.jp/all2.html

こちらでは福島第1原発の現在の状況をライヴで映している(はずの)カメラです。特に夜、今でももくもくと何かが噴き出しているのが確認出来ます。



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